''ラブホの四季・春篇''
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ラブホな街の灯

ラブホ街にただ1軒あったスナック喫茶「街の灯」。
そういえばどうなってるのかしらね、と思って、前を通ってみたら… 閉まってる。
ラブホ街の街の灯は消えた。
つぶれる前に一度入っておくんだった。残念である。
お風呂

風呂釜が壊れた……
ガスが点火しない……
借りるのはいつも古い建物ばかり。賃料が安いから。
つまり老朽化したとこに引っ越すので、風呂釜のトラブルが多いの。これで3回目…… 泣ける。
しかし今度の大家さんはメンテナンス好きで、すぐ「ガス釜、取り替えます」と。万歳!
だけど工事は当日には無理だと。お風呂入りたいな~ この辺お風呂屋さんないんだよな~
ソープはあるんだけどね。
3日後に工事のおじさんがきて1時間半で取り替えてくれて
「これで今すぐにでも入れますよ」と言われた時にはおじさんをハグしてあげたかった!!
3日ぶりのお風呂~~~ 気持ちよかった~~~
クラゲのように漂った。溶けてしまいそう。
ね? 私が温泉に行くとどうなるか想像つくでしょ?
春の日の昼下がり

昼下がりのラブホ街。
細い道路は大量に水を流されお掃除も済んで、人通りも少なく、この時間が1日のうちで一番のんびりとしている。
時々出前のお兄さんがバイクで裏口に中華丼なんか運んだりしているが、嵐の前の静けさが漂っているのだ。
ラブホな丁寧語
ラブホから出てきたカップルがお話ししていた。
オニーさんは、ひらひら短いシフォンのミニスカートのオネーさんのお尻を撫でながら
「じゃあ、今度メールさせていただきます」と言ったのである。
え? 丁寧語…
そしたらオネーさんがお尻を撫でられながらニッコリして
「よろしくお願いしますね」と答えたの。
なにか、その、お尻を撫でている行為と丁寧語がチグハグだったので、違和感覚えてそれをある男の人に話したら
「あ、そりゃ店通さないで、チョクで、ってことでしょ」なんだって。
へえ~~ チョクは丁寧語なんだ~
ラブホな停電
夜の10時前に、突然停電した。
え~っと… そんなに電気使ってないのに…
携帯の明かりでブレーカーを見たけど落ちていない。
なぜ?!
窓を開けてみると、何と!!!
線路の向こうは明かりがついているのに、ラブホ街、つまり私のマンション側は真っ暗!!
なんじゃこれ?
思わずテレビのニュースは?とかパソコンで調べるか?とかウロウロする自分が滑稽。
ロウソクをつけるランタンがあったのを思い出し、またもや携帯の明かりで探して火をつける。
こんなに明るいとは思わなかった。
そして携帯は非常時に役立つわ! 手回し充電器を用意しておこう!
そのうちマンション中が騒がしくなった。
廊下をバタバタ走る音や、窓を開け閉めする音、ドアがバタンと閉まる音、大声で何か言っているのが聞こえたり、えらい騒ぎとなってきた。
夜10時で停電、とは、大変な状況であることを実感。
しかし、しかしである。
ラブホ街はもちろん真っ暗で、シーンと静まり返り、窓ひとつ開かず、物音もしない。
その一画は、まるで無人地帯のようであった。
まあね、そこにいるのは真っ暗でもいい人たちだわよね。
30分後に明かりはついたが、いやはや大変なことであった。
すぐにネットで調べたが、何もなかった。
瑣末な一部地域の、短い停電だったのである。
君が代斉唱
深夜、突然隣のラブホから「きーいーみいがよーおーはー」と斉唱する男女の歌声が聞こえてきた。
えっ な~んなのっ??
「… こけのーむーうーすーうまーーーあぁでーーー」
はあ???
変なカップルもいるもんだわい、と思ったらまた始まった。
「きーいーみーいーがよーおーはー」
!!!
たぶんサッカーの試合でも終わったんだろう。ラブホで観戦してて。
しかし… 窓開けて歌うか?
窓を開ければ~

金曜日は疑似カップルも本当のカップルも、昼間っから大勢歩いてるラブホ街。
スーパーで買い物してから足早に歩いて通っていると、
突然!
「あぁ~~ん あ~~~ きゃあ~~んん あ~~」
と、大音量で響いてきた。
はあ?
ラブホは少なくとも機密性がウリだろうから、これは故意に窓を開けたとしか思えん!
あっけにとられて、そして思わず足も遅くなる。
しかし歩いているカップルはすべて、この件は聞かなかったことに、と決意したらしく、それまでの会話をとぎらせることなく歩いている。
この珍事を無視して、全員能面のように無表情の人々が行き来している風景は、なんというのかしらね、ちょっとすごく不気味でしたね~