釧路駅から阿寒湖温泉行きのバスに乗ると雨脚がとても激しくなり、
小さな釧路空港の明かりも雨にかすんで見えた。
そして車窓からは暗闇しか見えなくなり、降りる人もいないバスは国道をひた走る。
終点、阿寒湖温泉のバスターミナルで「お忘れ物ございませんよう」と運転手さんに言われて降りたが
ターミナルの建物でタクシーを待っているときに
「この傘お持ちの方は~~」という声がして振り返ると…
え?! 私の傘だった。
よかった~ 雨が上がったので折りたたんでそのまま座席に忘れてしまったの。
2年前まで通っていたバス路線が廃止となり、今は車かタクシーで行くしかないオンネトー温泉。
15分ほど暗い山道を走る。
料金5,600円。 暗闇の中タクシーを降りると、宿の前は硫黄のかおりが漂っていた。
釧路駅でお蕎麦を食べてきた私たちは、クッキーやらカヌーのお昼の残りのお握りなどを食べて
お風呂に。
内湯も露天もだれもおらず、新妻ちゃんに
「明日は露天から星が見られるといいね~」
新妻、この日のためにDSの星空ソフト、空に向けるとその位置の星座を教えてくれるってやつを買い込んで楽しみにしているんですよ~
「今日は見えないけど、明日だよ明日!」
「絶対見えますよねぇ~」
「そういう予定です」
(2010年9月3・4日 2人泊 1泊目朝食のみ・2泊目夕食のみ 2泊で@10,500円)
細く開けておいた窓の向こうから、ジャボジャボジャボと大きな音がして
硫黄のかおりで目が覚めた。部屋のすぐ向こうは露天である。
朝5時半…
ああ、露天のお掃除が済んで、新鮮なお湯が入れられているんだ…
とても豊かで幸せな気持ちになって、また目を閉じて寝てしまった。
朝食は1階の食事処で7時半から。
今日はウオーキングするからね、しっかり食べなくちゃ。
ごくふつー。当たり前においしい。
露天に行ってみる。
脱衣所は男女別。この手前の通路に喫煙スペースが2カ所あり、椅子が置いてある。
あ、部屋は禁煙なんです。
女性用の露天入り口。
塀があって、その向こうは男性用の入り口。
これは男性用の入り口からの眺め。
浸かるとこんな感じ。
まだ夏の空が広がっている。
湯口は女性用の入り口そばに2カ所ある。
劣化していない透明なお湯がそそがれる。
もう1カ所の湯口。
裏からは出ていないので、この女性用入り口あたりのお湯がいちばん新鮮、ということである。
朝は透明なお湯も、午後には白濁してくる。ときどき、ほわっと硫黄の香りがするがあまり強くない。
ちょっと口に入れてみると、酸度もそんなに強くなくph3くらいか。
優しいお湯であった。
ここの内湯は、男性のほうが足元湧出で、女性用の内湯はそうじゃないっていうんで
「男湯にも入りたいんです!」って宿の人に言ったら
「男湯ね、仕切りのドアは女湯から開けられるから、人がいないときドンドン入っちゃって~」
はっ!!
ありがたや~!!
ドンドン入っちゃいました。
いい塩梅にすり減った木の縁からザブザブとお湯が溢れる。
すごい勢いで管からお湯が出ているが、あれは上がり湯らしく、温泉ではない。
玉砂利が敷かれていて足裏に気持ちいいが歩きづらい。
砂利の下からというより、岩の隙間から湧き出ているらしく、ときどき温度の違う流れを感じる。
確かに足元湧出だが、岩手 藤七温泉 彩雲荘のジェット噴射湧出体験のあとでは、
まあ、こんなもんかな~みたいなかんじかな。
上からもそそぎこまれる。
すごく景気良く流される上がり湯。これは男湯のみ。
上がり湯が温かいのは、管を湯船の中に通して温めているかららしい。
して女湯に戻ってみると…
いいのよね、これがすごく…
足元湧出でもなく、上がり湯もないんだけど、なんとも落ち着くの。
お湯は隣から新鮮なのが入ってくるし、かつうるさくないのね。
そして風呂場全体の木の造りもよく、お湯は適温で、新鮮でいてこなれた穏やかな感じで。
すごく気に入りました~。
…たいへん驚いたことがあったんですけどね…
この日の午後、ウオーキングから帰ってきて1人で喫煙スペースでタバコすってたら、
露天からはけっこう大きな話し声がして、
そして私の前を全裸のおじさんが4~5人、手で前を隠しながら
「あっ!」「あっ!」「あっ!」「あっ!」 と言って通過して内湯に入って行ったの…
名実ともにぶらぶらの徘徊集団…
何なんだろ!日帰りの人? なんてモラルのない人たち!!
その後Tシャツに短パン姿で首からタオル下げた男性が通っていく姿が、やけに高貴に見えた。
宿のすぐそばからオンネトーに向かって遊歩道が造られている。
始めはクレソンがたくさん生えている湿地の木道。
やがて木道がなくなりアカエゾ松の原生林の中を通っていく。
ゆるいアップダウンはあるが、おおむね湖に向かって下っていく谷あいのコース。
よく手入れされた、キノコがたくさんはえている鬱蒼とした林である。
来るときに乗ったタクシーの運転手さんが
「うまくいけば松茸がはえてるかもね」って言ってた。
もちろん北海道では、見つけたもん勝ちよ~~~
なかったけど。
1時間ほどで到着。
オンネトー。
たくさんのトンボが飛び交っていた。
オンネトー茶屋でジェラートを食べたのち、新妻ちゃんはここから30分ほどの
<湯の滝>に行くという。
私は蚊に刺されてちょっとめげ、はやいとこ帰って温泉に入りた~い!ので
ここからは別行動。
道道オンネトー線をテクテク歩く。
観光写真。
いや~ 暑いでっせ~
バスに忘れた傘、見つけてくれてよかった~
途中にあった沼など観賞するも、たいしたことなく再び歩きだす。
隣の宿のお風呂とか行ってみるか、などと思っていたのだが、
「景福」のあの女湯の落ち着き感がすごくよかったので、さっさと宿に帰る。
正面、景福。
そして誰もいない女湯でくつろぐ。
露天は日帰りで賑わっているが、内湯はいつも独占でニッコリ。
都合3時間ほど歩いたのでけっこう足が疲れたが、こういうあとにはやっぱり温泉よね。
夕食は6時から。
新妻ちゃんと席に着くと、男女合わせて10人ほどの集団がどやどやと。
その中には、さっきのぶらぶらおじさんたちがいたのだった!
私と顔が合うのはばつが悪かろうと思い、そっちのほうは見ないようにしたのだが、
どうやら北海道の各地から集まった男女のようで、久しぶりの再会を喜んでいるらしいが
やたら騒いでビールを飲み、声がでかい。
おまけに「○○温泉はよかったから今度行きましょう」などと言っているその○○は…
私がすごく好きな宿なんですけどー! あそこでぶらぶらかーい!!
さっき服を着ていた高貴なおじさんは、1人で食事をしていた。
晩ご飯、量もほどよく、家庭食だけどおいしくいただけた。
ラム肉らしきものと野菜を煮たものには手を出さず。
新妻ちゃん、ひと口食べて微妙な顔に。
串カツのフライなど。さめているけど、全然支障なし。
新サンマの煮つけもちゃんと新サンマの味。おいしくいただきました。
その後夜の露天に新妻ちゃんと入ったら、それなりに星は見えたんだけど靄がかかっているようでスッキリ感がないのね。
でもこれはやがて晴れてよく見えるようになるんじゃないかと思えたので
「あとでまた入ってみようね」って言って出たんですよ。
そしたら例の集団男女10人が露天に入って大騒ぎ。
そのうちおばさんどもがでかい声で「あー 星が見えるわー」ってね。
私たちの部屋に声は筒抜け。新妻ちゃんは
「悔しいー! 早く出ないかなぁ!!」って言ってたんですけど
私はもう、女湯の内湯に満足してるので、内湯でのんびりまったりしてから
洗面台で歯を磨いてましたらね…
露天のほうの通路からバタバタと、おばさんが駆けてきたのね… 全裸で!
胸のとこにフェイスタオル当てて、だけどタオル小さいからあちこちはみ出てるわけですよ!
そして私と目が合うと 「あっ!」っと言ってそのままトイレに駆けこんだのね…
ぶらぶらおじさん & はみ(出し)おばさん の集団!!
露天は桶ないからかけ湯もできないし、彼女はトイレから出たらそのままズブッとまた露天に入るわけでしょ?
そういう節操ない集団が荒らしまくった露天になんか入りたくない私は、もうそのまま寝ることにしました!
収まりがつかない新妻は、彼らが出た気配ののちに露天に入り、
喫煙スペースで12時すぎてもくっちゃべっていたこの集団に
「もう就寝時間ですから静かにしてください。声が大きくて会話はこちらの部屋に筒抜けです」と説教したそうである。
「星は見えた?」って聞いたら
「見えましたよぉ! 先のほうにいくのは怖かったので行かなかったけどぉ、とってもよかった!」そうです。
翌日は朝食を摂らないことにした。
7時半は私たちには早すぎて夜中!
その時間、心おきなくのんびりと人のいないお風呂を味わえる。
いい女湯だった。
<足元湧出>という言葉に惑わされて、やたら男湯を目指していたのだけれど、
気が付けば静かで、心地よく、そして新鮮で柔らかいお湯、
この女湯は、私が入った風呂の中でも五本の指に入る。
ときどき気分を変えて男湯にも行けるし。
男湯はあの小窓からそのまま裸で露天に行くことができるんだけど、
そうやって露天に行くんだったら逆コースで内湯に戻ればいいわけよ、
わざわざ裸で館内を歩いて内湯に戻って来なくても!!
なんて集団だー!! 思い出してプンプンしたのだった。
山のほうから清水が管で引かれていて、内湯の中をくぐらせて上がり湯として流されている。
お湯に入り、そのザーーーーッと流れていく音に耳を傾けていると、
自分の存在がふっと消えてしまうような気がする。
帰りはまたタクシーの後、バスで釧路駅に。
新釧路川の土手をお父さんと白い犬がわっせわっせとよじ登っていた。
見るともなく見ていたら、ついに土手の上まで辿り着き、あ、やっと登ったんだ。
そしたら白い犬が「おとーさーん」 といわんばかりに立ち上がってお父さんに抱きついてた。
空港過ぎてわざわざ釧路まで、何が目的かって? 「六花亭」ですよ。
さて~ 今回何を食べましょうか~
こういう時間が幸せなのよね~ うんうん
ハマナスの実?
そして… 六花亭でおなかいっぱいになって至福のひとときののち、
帰路についているときに。
今回できなかったカヌーのリベンジ、いつやろうか… と、
頭の中のカレンダーを必死で調べている自分に、気づいたのであった。
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