(20010年7月12日 1人泊 @9,600円)
羽田から能登空港に行くには、空港のバスで飛行機の所まで行くので、待合スペースは1階のバス乗り場前なのだが、ここはこぢんまりしていてタバコ部屋が至近距離にあり落ち着けて、わりと好きである。
1時間ほどで能登空港に着く。
この小さな能登空港ができて10年ほど経つのであろうか。
当初ANAは1日1便でおさえたかったようであるが、地元は午前と午後の2便を強く望み、
協議の結果2便になったが、その条件としてもし損失が出た場合は地元がANAの損失分を負担し、
そのかわり利益が出た場合はANAが利益分を地元に還元する、という取り決めをしたらしい。
そのため能登半島一帯の地元の、観光客に対する思い入れはとても強い。
能登空港に置いてある、年2回出される立派で分厚いパンフレットをはじめとして、豊富な地図類、
数多くの<能登丼>の店やそれぞれの店の丼の特徴や写真、それに伴うスタンプラリーなど、取材や編集、写真撮影などに経費を惜しむことなく作られているのを感じるし、観光客が楽しめるよう努力をかかさない姿勢がみえる。
行ってみたら大したことのない施設でも、情報は力なりという勢いで載せていることに頭が下がって、妙に納得したりしてしまう。
飛行機の発着に合わせて運行される<ふるさとタクシー>という乗り合いタクシーは、陸の孤島状態の能登空港から、ほぼ能登半島全域に安い料金で行くことができるし、場合によっては目的の宿の前まで送迎してくれることもある。
その甲斐あって、あの地震にもめげずに観光客が順調に増加し、毎年ANAから利益分を還元され、
その金額1,000万円を超えることが続いているという、全国でも珍しいそしてモデルケースになるような空港なのだ。
もちろんそれは、豊富でおいしい魚介類、自慢できる能登牛、おいしいお米や日本酒、そして能登の豊かな自然あってこその、能登空港であるが。
じつは私は能登半島の北端の珠洲市にある宿に泊まりたかったのであるが、その宿はもちろん初めてで、
そして1人泊の私がのっけから「2泊したいんです」とは、ちょっと言えないような宿だったので…
では、ぜんぜん違うタイプの宿を選んでもう1泊しよう、と思い…
よりにもよって能登半島の付け根方向、富山県との県境に近いこの宿を選んだのは…
だいたい、能登半島にはいい温泉がないのである。
輪島温泉、和倉温泉には行きたくないし、そうするともはやほとんど、ないのだ。
この民宿のホームページは、いかにも業者がそれふうに作りました~ という
見た目ツルッとして私にとってなんだか魅力のないもので、どうしようかな~
でも温泉らしいしな~ と悩んだが。
で、電話をしてみると、まず、電話が鳴っても延々と出ない。
そしてやっと出たおじさんが
「いま、違う電話に出ててね… 1度切りますね」
1回切って、これはたぶんナンバーディスプレーに出た私の電話に向こうからかけてくるんじゃなくて、
こっちからかけるんだろな~
で、15分後くらいにかけ直し
「あ~ すみませんね~ さっきのかたですね~」という、いわゆる能登の方言の<じんのび~>な応対、
ホームページと全然違う印象で、私は逆に好感を持ったのである。
こういうのがダメな人は、この宿向いていません。
「お一人様? あ~ 12日ね、だいじょうぶですよ」というので、予約。
電話を切ろうとするから慌てて「お料理、標準でいいです、宿泊料は?」と言ったら
「そうですね… えーっと… 9,600円くらいでどうでしょう?」
宿泊料の打診をされたの初めてで、思わず笑っちゃいました。
「それで結構ですよ」(ホームページに載っている料金より安いの)
しかしさすがの<ふるさとタクシー>も、繁忙期だから七尾駅までしか行ってくれず、このさきはバスかタクシーで…
例によって「きっと2時間に1本のバスよ。えい!面倒だ!タクシー」の私。
時間が早いので、七尾の街を散策。
午前の飛行機はかなり早く着いてしまう。
ということは当然その時間に合わせた<ふるさとタクシー>しか交通手段がないので、七尾駅周辺で時間を潰すしかない。
予約のときに「早く着いてもいいですよ、ゆっくりされたら」と宿では言ってくれたのであるが、北海道とは違って、あんまり早く着いても迷惑だろうと思い…
パンフレットにある七尾市内の<一本杉通り>を歩いてみる。
道は整備され、古い店の造りはそのまま残り、汗がしたたる昼下がり、人も歩いていない。
目的地はこのお醤油屋さん。
味みをさせてくれた。
小指の先にちびっと付けて、 あらま! なんておいし~い!!
<携帯お醤油>という可愛い瓶があり、これから旅する私は重いものを持ちたくないので、嬉しくなって買いました。
ブラブラと七尾駅前まで戻ると、空腹感を覚えて、開いていた駅前のビルの回転寿司に。
だれもいなかったが、カウンター内におじさんが。
「注文してくだされば握りますよ」
「今日のお薦めは?」
小さな手書きのメニューボードに…
「では、富山湾のイカから」
いかにも富山湾のイカだったよ~~~
「近海の鯵!」
これ感涙もの。私は鯵が好き!
久しぶりの鯵らしい鯵さん! そして大きい!
もう一皿いこうかな~ しかしまだお薦めあり。
「富山湾の白海老!」
あー… 回転寿司でこの味か~~~
回転じゃない寿司屋だったら、いったいどうなるのじゃ~~~
その後富山湾のシャコとか食べ、
「富山湾の甘海老!」
ふっふっふ いうことないわ~~~
1,500円ちょっとくらいだった。やす~い!!
駅前のバスターミナルの前にあるベンチで、ゆったりと携帯灰皿片手に紫煙をくゆらせたのち…
タクシーに乗り込む。
「<サンヒルズ のと>って知ってます?」って聞いたら
しばらく考えてから
「ああ、氷見に近いほうだね、わかりますよ」
20~30分ほど乗っただろうか、6,500円。到着。3時過ぎ。
黒い瓦が連なる、横に長い建物。
玄関前は旅館風、だけど、中に入ると民宿風。
女将さんらしきおばあちゃんに2階の部屋に案内される。
換気扇のスイッチを切り、エアコンのスイッチも切り、それでもまだブオーンという音がする。
この低音の電気音がいちばん嫌いなんです、私。
音源は冷蔵庫だ!
しかし、この霜では、コンセントを抜くと…
きっと水浸しに…
目の前はこんなにいい景色なのに…
遠く潮騒も聞こえ、鳥のさえずりも聞こえるのに…
ブウォウォーーーーン
廊下をはさんで斜め前に、きれいな水洗トイレが。
廊下の踊り場。
玄関上がって正面には、ガラス戸の向こう、庭の向こうに富山湾。
1階の廊下突き当たりにお風呂。
内湯に入ると、久方ぶりに嗅ぐ、塩素臭。
ちょっと残念。
なかなかいい雰囲気なんだけどな~
お湯は強烈にしょっぱく苦い食塩泉。
ドアを開けると表に露天。
いかにも手造りって感じで、それもなかなかいいんですけどね。
こっちも循環、塩素入り。
でも正面に海。 風が気持ちいい。
湯上がりに広い庭を散歩。
先端まで行くと、下の国道を車がビュンビュン通る音が。
しかしその向こうに広がる海の縁ぎりぎりを、カーブを描いて通っている道の風景は、いかにも奥能登、であった。
宿の外に出ると、元気に育っている田んぼが広がる。
心やすまる風景だ。
こんな景色が見たくて、私はやってきたのだ、能登半島の付け根まで。
それが見られて、とても幸せな気持ちになった。
夕暮れ、窓辺に座って暮れていく海を眺めた。
夕食は1階の個室で。
けっこう大きな鍋を開けてみると…
アンコウ鍋です! 大振りのキモも入ってます!
舟盛りが運ばれてきました!
うわ~! これは多すぎ… 食べられないかも…
トビウオのお刺身は初めてです。小骨があるがコリコリと、締まった身のいい歯ごたえ。
夏の魚の雰囲気がひしひしと伝わる。
しかしなんとイキのいいお刺身なんでしょうか~! 貝もおいしい!
刺身って、こんなにうまかったっけ?
いつもは3切れで十分の私…
結局… 全部食べちゃったんです! ううー
まずい刺身は手がでないけど、新鮮でおいしいお刺身は食べられちゃうんですね~。
我ながらビックリ。
小さいけど、尾頭付きの鯛の塩焼き!
電話に出たご主人とおぼしき男性が、ご挨拶にみえた。
しばらくお話して、館内のあちこちに飾ってある山岳写真は、ご主人の手によるものだということがわかった。
山が好きで好きで、昔はよく立山に登って写真を撮ったそうである。素人離れした写真で、なおかつかなりの大きさに引き伸ばされ、そうとう規模の大きな暗室をお持ちなのだろう。
食事の後には、大判に伸ばされた山々や能登の海の写真をたくさん見せていただいた。
「デジタルカメラは、まだ触ったことないね」
アンコウの天ぷら。能登の塩をちょっと付けて。
このほか酢の物、冷たいうどん、茶碗蒸しなどがあり、とんでもなくおなかいっぱいに。
しかしお鍋もおいしいだしで、おまけにねっとりとしたアン肝も素晴らしくうまく、
お米もおいしかった~
とにかくすごく食べまくりました。
日本海の幸を。
デザートはスイカが出てきた。みんなみんなおいしかったよ~!
あの灯りのむこうに、立山連峰が見えるんだそうな。
朝食は7時半に、食事処で。この日はちょっと遅れて7時45分から。
今日は8時20分に、この宿の下のバス停からバスに乗り、七尾駅に向かう。
色々考えて調べたけど、能登半島の鉄道は次々に廃線となり、
路線バスは複雑で、乗り継ぎのたびにかなりの時間待つことになると、
ここは七尾駅から<ふるさとタクシー>に乗って一旦空港に戻り、また違う<ふるさとタクシー>で
珠洲市に向かうのが一番効率がよいようだ。
朝ご飯は食べなくてもよかったのだが、せっかくだからちょっといただく。
お味噌汁の中には魚のアラ、身がたくさん。
雨に濡れる紫陽花を見ながら坂を下る。
バス乗り場はコンクリートの四角い建物で、上りも下りもここで待つらしい。
冬の厳しい風と寒さが想像できる。
バスは老人たちを乗せて海沿いにしばらく走り、やがて45分ほどで七尾駅前に到着。
<ふるさとタクシー>は10時にやってくるので、駅前のミスタードーナッツに入ってコーヒーを飲み、
のと鉄道の1両の車両なんかを眺めたり。
やがてやってきた<ふるさとタクシー>は途中、和倉温泉駅で5~6人の人を乗せ、雨上がりの緑豊かな道を、空港に向かってひた走る。
そして次の本命の宿に向かって、私の気持ちも昂ぶるのだった。
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