(2010年6月28・29日 1人泊 @8,550円 2泊目は夕食のみで7,550円)
岩内バスターミナルから、倶知安(くっちゃん)行きのバスに乗り換えて、
青空のもと、クーラーを効かせたバスは軽快に走る。
五色温泉旅館に予約の電話を入れ、交通手段を尋ねたら
「7月になるとニセコ駅からバス便が出るのですが、6月は倶知安駅からタクシーしかありません。
どうしますか?……」
電話の向こうの男性は、気の毒そうにそう言った。
「タクシーだといくらぐらいかかりますか?」
「4,000円ちょっとですね… 交通手段はそれしかないですね……」
(と、暗めの、予約しないだろな~という感じの声になったの)
まあ北海道でタクシー4,000円なら安いもんである。(という感覚になってしまっている私… )
「いいです、予約します」
「あ? そうですか!」
だって、ここの宿代、トイレ付きで8,550円、洗面・トイレなしの長野の<いろは襖の宿>は
17,000円くらいだもの、ぜんぜんいいじゃん!
あら、しかもあの宿と偶然名前は同じよ!
倶知安駅は暑く、11時過ぎではタクシーに乗るには時間が早すぎて、ここで少々時間を潰さねば。
駅の周りを見ると、隣にコープ北海道の建物が。
あそこ行ってみよっと!
なんか珍しいものないかな~
<中華饅頭>と書かれた変形ドラ焼きのような和菓子。どこが中華なんでしょう?
中に小豆の餡が入っているらしい。
これはポピュラーなものらしく、もっとドカーンと大きなものも売られていた。
いまの気分はあんまり買いたいものではなかったが、そのうち食べるかも。
思い出した!
これは帯広あたりが発祥のお菓子だと思う。
鮮魚売り場は羨ましいのひと言。
北海道近海の新鮮な魚やイカやタコがすごく安い!
お肉売り場にはメーカーもいろいろ、冷凍の味付きジンギスカンが山盛り!
道産の苺の小パックと、山形産しかなかったが、サクランボを思わず買ってしまう。
そして嬉しいことにお気に入りのパン屋<レフボン>が入っていたので、
これまた思わずトーストカツサンドを買ってしまった。
駅前の通りを散歩すると、あまりに暑くてアイスクリームとか食べたくなる。
あ、コーヒーショップ? あそこにあるかな?
ここでアイスクリームに冷凍のベリー類を混ぜ込んだスムージーをいただく。
店の前の日影の椅子に座って、通行人から見られながら。
あんまりたくさんの人は通らないからいいんだけど。日影は爽やかである。
冷たくて甘くてミルクの味が濃くてちょっと酸っぱくて、すごくおいしかった。
12時半になったので、たぶん1時に宿に着いても入れてくれるだろうと踏んで、
タクシーに。
気温31℃だそうである。
急カーブの山道を走る。
ほとんど車は通らず、山々は美しく、緑は濃く、アンヌプリは微笑み、なんかとっても女王様気分。
短いドライブは終わり… 到着! 4,300円。 午後1時。
玄関を入ると、日帰り入浴の人たちが。
ちょっとどうしようか、とためらっていたら、
マネジャーのような女性が
「どうされました?」
「早く着いちゃったのですが…」
「あ、大丈夫ですよ、どうぞ」
すんなり2階のお部屋に。
2ベッドルーム。
あら… きっと反対側のほうが景色がいいはず… アンヌプリが見えて。
うーん… 1人泊だからな~ 仕方ないか…
ときどき ブウォウォーーーン と、モーターの音が聞こえる。
窓を閉めれば聞こえないが、本日暑いのよね~
あそこに建物があるわ。あれはなに?
洗面・トイレ。スッキリ。
金庫、電気ポット、ちょーきれいにBSが映るテレビ。
お茶セットと灰皿!
フロント。人がいないときは1階にある厨房が受付。
さっきマネジャーらしき女性が、鍵を渡してくれるときにお風呂の位置と食事の時間等教えてくれて、
「なにも書いていないのですが、廊下のガラス戸を開けて下に行くと混浴の露天があります」というひと言があった。
大丈夫!ちゃんと混浴用アイテム持っているから!
しかしのっけから混浴、というのもなんだから、とりあえず男女別のお風呂に。
風呂場は2カ所あり、まず<から松の湯>に。
脱衣所。ドライヤーなどあり。日帰り客がかなり入っている。
内湯。
改築されて風呂は石造りになったらしい。
かなり酸っぱいけれど、お湯は思いのほか柔らかく、温度やや熱め。
露天方向。
露天。内湯よりぬるめ。
板塀で風景は望めず。男湯は景色を望めるのかも。
なんというか… たぶん改築前のほうが良かったんじゃないだろうか。
小奇麗に、日帰りの人も体を洗い髪も洗い、休憩室でゆっくり休める態勢になったぶん…
割とありきたりのノッペリとした風呂になっちまったんじゃないんですか、きっと。
さっきのマネジャーをつかまえて
「混浴の露天の行きかたは?」
廊下のガラス戸を開けて教えてくれた。
湯小屋はちょっと傷んでいて、造ってからそのまま放置されている感がある。
男女別の脱衣所、というより単なる仕切りと棚があり…
あら! よさそうよ!
あ!! いいじゃん!!
あ~~~!! すごくいいじゃん!! アンヌプリが正面に。
ただし、展望台からは丸見え。そう、C夫妻に連れてきてもらってあそこから見たもん。
顔までは分からないけど、バッチリ見える。場合によっては目が合う。
しかし上に人がいるのはこっちからも分かるから、対処できるけど。
なんでこういう位置に造るんかいな? どちらかちょっとずらせばいいものを…
風呂に1人で入ってる若い女の子と、展望台の上から眺めている若い男との、出会いの場創設?
稜線の上にちょっぴり顔をのぞかせている山は…
あとで分かったが、イワオヌプリという山らしい。
さっきコープで買った苺とサクランボを洗って食べた。
苺も芯がなく柔らか、サクランボは山形産佐藤錦、どっちらも甘酸っぱくジューシーで初夏の味わい。
温泉から出た後は、ひとしおおいしかった。
陽はまだ高く、湯上がりに散歩。
展望台に登ってみる。
展望台から整備された木道を降りると、宿の側面、混浴露天の脇に出る。
宿を迂回して部屋から見えた建物が何なのか確認しに。
五色温泉旅館 別館 と書いてある。いまは使われていないのか…
あっ!
湯音がする!
ああーっ!! お湯が出てる!
え? ここは入れないの?
ちょっと離れたところに源泉の標識が立っていた。
花畑源泉。
部屋から聞こえるモーター音は、このお湯を本館に揚げている音なのだろうか?
夕食は6時から食堂で。
マネジャーの女性が運んでくれたので
「あの別館ってお湯が出てましたが入れないんですか?」と聞いてみた。
「湯治棟なんですよ。入りたいですか?」
「もちろんです! 入れるところは全部入りたい!」って言ったら、笑いながら
「鍵お貸ししますよ」って言ってくれた!
天ぷらは揚げたて、茶碗蒸しはしっかり冷えているもので、豚肉のお鍋もふつーにおいしい。
日本酒、お燗で。
だけど気持ちは「ふろふろふろ~」だから、そそくさと。
食べ終わって厨房にすっ飛んでって
「鍵!貸してください!」
「急がなくていいですよ。ゆっくり入ってきてください」って言ってくれた!
だれもいないからシーンとして薄暗い。
条件反射で、なんとなく女湯に入ってしまった。
内湯は溢れていた。
誰もいないのに… もったいない。
内湯はやや熱め。しかし入るとキュッとしたあとに、穏やかな開放感があり、
酸性なのになめらかな肌触り、すごく気持ちのいいお湯で、本館のほうと湯あたりが違うのである。
一人占め、っていう気分のせいなんだろうけど。
こんなお湯を独占できるなんて、えっらく贅沢な感じで、至福感に満たされた。
露天も入らなくちゃ!
お湯はかなりぬるめ、落ちるお湯も絞ってある。
景色は前の木の柱が邪魔であまり見えないが、風が気持ちよく、青空が見える。
1時間以上まったりと浸かって、出るときに気づいた。
男湯でもよかったんだ! のぞいたら、男湯の露天はお湯がたっぷりだった。
次にこっちも入らねば!
夜は懐中電灯片手に混浴の露天に。
もちろん電気もつくんだけど、人工の灯りなんかないほうがいいに決まってる。
満月が山々の稜線をくっきりと照らし、周辺は星が輝き、ときおりひんやりとした空気が流れていき、
お湯の音が小さく響き、夜気でぬるくなったお湯にひたりながらいま北海道のニセコの山の中にいる自分自身を、幸せに思った。
どうもありがとうございます。
朝食は7時半。食堂で。
私の胃はまだ寝てる。こりゃ、明日は食べなくていいわ。
ちょちょっとつついて、ふろふろふろ~
別館の男湯を目指す!
露天にお湯は溢れて、すごく気持ちがよかった。
やっぱりこっちの別館のお湯が好き!
まったりまったり~~~ してたら…
塀と岩との隙間から… えーっと… どうしよう…
えーっと、えーっと、どうすればいいの!? うわぁ ながーいーぃ …
温泉好きの蛇ではありませぬように… とせつに祈っていたら、スルスルと下の岩の隙間に入っていった。
あーーーー。 よかった。
蛇がいるところにお風呂造ってるんだもんね、仕方ないですね。
その後はもう、いらっしゃらず、再びゆったりと入りました。
本館、<から松の湯>ではないほうのお風呂入り口。
内湯が2カ所、奥に露天。
お湯、ぬるめでなかなかいいんですよ。
湯小屋全体も天井が高く、木造りだし。
奥の露天もなかなかいいんですけど。
でも、なんであんなところに枯れた木をそのままにしておくかねぇ。
あの塀、あと50㎝低くすると、かなり山が望めるんですけどねぇ。
ほんのちょっとしたことで、お金もかけずにすごく良くなると思うんだけど。
湯上がりに、展望台の上、昨日よりもっと先に散歩。
町で造っているのだろうか、遊歩道がたいへんお金をかけて整備され、展望台脇には、このあたりの山で亡くなった方をまつる小さな祠が。
ゆっくりと登り下りをする道が、延々と続く。
イワオヌプリへの登山道は、ここから石の階段になっていて、急な斜面を上っていく。
ああ… 空ってこんなに…
広かったんだ…
また別館の湯治棟に行き、男湯に入る。
本日はおばあちゃんたちの集団がいて、みんなで食事の支度をしていて、
ロビーは夕餉のおいしそうな匂いに満ちていた。
お風呂に入って、山を見ているだけで、時間が過ぎていくのであった。
本日の夕食。
ほかの人と献立を変えてくれている。
お鍋は海鮮鍋。おだしがおいしい!
ブラックタイガーだそうですが、尾頭付きの焼きたてを持ってきてくれた。
朝は食べずにお風呂満喫!
チェックアウトの時に、マネジャーが
「どうですか? 楽しめましたか?」
「男湯以外、入れるお風呂は全部入れて満足です!」
「温泉お好きなんですね。男湯も人がいないときに入っちゃえばよかったのに」
!! 大胆なご発言で…
「湯治棟のお湯がすごく好きです。他と変わらないんでしょうけど、あのお湯の感じが一番気に入って何度も入りました。どうもありがとう」と言ったら
あら?!っという顔になって
「分かりますか? じつはあそこだけ違う源泉なんです。
本館のお湯は山の上からおろしているんですが、あそこだけは花畑源泉から直接引いているんですよ。
このへんのお湯の成分は同じはずなんですが、きっと微妙な違いがあるんでしょうね」
(じゃあ、私の泊まった部屋に聞こえてくるあのモーター音はなんだったのだ?)
なんか、バリバリ得した気分になって宿を後にしたのだった。
はるかに山々が連なり、その稜線の上の広く大きい空。
東京ではけして見られないその空の丸さと大きさを、思い出しながら。
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