二股温泉 柏屋旅館

(2010年4月3日・4日 1人泊 @12,750円)



二股温泉 柏屋旅館

宿に電話して「混浴の岩風呂…混浴の岩風呂…」と連呼してたら
電話の向こうの女将さんらしき方が
「女性時間はないんですが様子を見ながら、ぜひ入ってみてください。
タオル巻きはしてませんが… でも… 急場では巻いちゃってもいいですよ。
何でしたら夕食をずらせばいいかも」

と言ってくださった。

新白河駅。
今日はね、あの前のほうの車に乗るんです。
ヤーコン号っていって、たぶん「大丸・あすなろ荘」の車なんだろう。

片道800円のところ宿が300円負担して、500円だそうです。往復1000円。

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かなり迂回して羽鳥湖というせき止めの人造湖のほうまで回ってから行くので
二股温泉まで1時間以上かかる。



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あ~ やっと雪が見えてきた!

と思ったらけっこう雪が降ってきて、うっれし~い!

羽鳥湖のそばの道の駅で10分ほど休憩ののち、雪の中を湖に沿って再度走り出す。

湖ってったって大きな水溜まりだから。川は例によってコンクリートの堰だらけでしょうね。


「あすなろ荘」の前で車を降りると、柏屋旅館のご主人が車で迎えに来てくださっている。
歩いても2~3分の距離なので、恐縮してしまいました。






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玄関、そしてフロント。


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建物は新しくはないが、どこもスッキリとしていて感じがいい。


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入り口、フロントは4階にあり、1階に内湯、露天、混浴の岩風呂がある。






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本日のお部屋、2階の8畳間、椅子・テーブルスペースあり。

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お部屋の感じも、もちろん新しくはないが、清潔感があり気持ち良かった。

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窓の外。まだ雪がたくさん。川音が聞こえ、もう雪はやんじゃって残念。

案内してくれた宿の方に「混浴の岩風呂に入りたいんですけど、女性が入れる時間帯はいつごろ?」

「今日は団体さんが大勢みえて。やっぱり男性が多いので、これからしばらくは… 夕食は6時にお部屋にお持ちしますが、
30分ずらして6時半からにしましょうか? 
そうすれば確実にお1人で入れますから」

お~ね~が~い~し~ま~~~す!!  あ~り~が~た~や~~~




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冷蔵庫を開けたら「銀婚湯」以上の霜が付いていてびっくりした。見たことのない生物みたいね。
トイレはシャワートイレ。



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さて、とにかく内湯と露天に。
部屋のすぐ横にある、飴色に磨き込まれた階段を降りて。


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えっと… 露天はどこなのかな? とりあえずノレンをくぐる。

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内湯。

窓があるけどなぜか暗い。露天はどこかな?と思いつつ、入っていた人たちは出てしまったので1人でゆっくり入れそう。

かけ湯をする。

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あっ!!  これはいいお湯だ!!

初めてのお湯というのは、初対面の人と目が合ったときのように、無意識にどこかで感覚を全開にして情報を得ようとするのだろう。

ぬるめの、ぬめりのあるお湯が体を滑りおりていくその一瞬、肌がお湯の質に敏感に反応した。


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適温だったのでスルッと湯船に入ると、これはあっという間に汗だくとなるお湯だと感じた。


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真っ暗だったのは、窓の外に、これは多分雪囲いではなかろうか、板が貼られていて光を完全に遮っている。
雪どけのころには取り払われるのかも。


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お湯は気持ちよく2~3分入っているとすぐに汗が出てきて、
えーっと… 露天にはどうやって…

あのガラス戸?  どうやって行くかねぇ… 服を着るのは面倒なので。



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タオル巻きで行くことにしました。

あらま!


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こんな恰好で橋渡るのも… 
ちょっとね、とは思うものの…


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だれも見てませんように!



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はあ~!

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気持ちいい~!  しかしヨシズが必要以上に下がっていて残念!

細工していいですよって言われたら、ペンチとカッターでプチプチ切って
ヨシズに窓開けたりして格段にいい露天にしちゃうんだけど…


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風景が全部見えなくても、川の気配をかなり感じられる風呂にな~

しちゃうんだけどな~

この露天、そうとう良くなると思うんだけどな~


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男湯の露天もヨシズが下がっているが、女湯より大きくていくぶん開放的。

しかし風呂の周りは隠されているけど、脱衣スペースのあたりは対岸から丸見えであった。






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お湯の感じがとても良かったので、あの内湯と露天でもすごく満足であった。






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6時5分前に混浴の岩風呂に向かう。
宿の方が気を遣ってくださり、出口の戸のところで
「いま女性が2人入っていますから、大丈夫です。ゆっくりお入りください」


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川に沿って、湯小屋に向かうこのアプローチがとてもよい。

そっけない実用的な屋根と手すりと打ちっぱなしのコンクリートの小道、
夕闇のおりてきた川面には残光と電球の明かりが共に映り、
雪どけで水量が増したであろう川音が響き、
いま向かっているお湯への期待が高まり、心が打ち震えるようであった。


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振り返ると、川下に遠くぽつりと露天の明かりついたのが見えた。


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カラカラと軽やかな音をたてて木の引き戸を開けると
浴衣姿のおばあちゃんが2人、汗を拭いていた。

「こんばんは~」
「おばんです、どうも」
「おばんです、さて、行こうかね」


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そして2人は去っていき、1人になった私は簡素な脱衣所で服をぬぎ、木の棚に入れた。


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風呂場の木戸もとてもスムーズに開いた。


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シンプル、そして感動的な風呂場だった…


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桶を取りかけ湯をすると、このお湯はとても熱く、思わず「アチチッ」と声が出てしまう。
けれどそのお湯の熱さに負けないくらいの誘惑のあるお湯の感じに、
期待に胸が高まる。


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そっと端から入ると、瞬間キュッと身が引き締まると同時に全身の解放感があって、
わりと深めの湯船の中に静かに身を沈めていると、熱くても十分に耐えていられるだけの
懐の深い、優しさを感じるお湯であった。


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ただしさすがにそんなに長くは入っていられずに、いったん湯船から上がる。

風呂場にたたずむ。
そしてそのとき、なんともいえない爽快感が全身を覆った。
風呂上がりのこんな清々しさは、初めての経験だった。


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再び静かに風呂に入り、今度はちょっと中で動いてみる。
岩壁の下の亀裂あたりから、熱いお湯が出ていることが分かる。

間歇的にボコッと大きな気泡が出ることも分かった。
壁のほうに座ったら脇腹におっそろしく熱いお湯が流れてきて、慌てて移動した。


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やみつきになりそうなお湯である。

ややアルカリの、口に含むと微かに苦みが残り、いつまでも消えない。
熱さの刺激はあるが、上がった後汗を拭きながら感じる、スッキリとした切れの良い清涼感が心地よい。




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足取りも軽く、なんだか歌でも歌いたいくらいの素敵な気分だった。


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6時半くらいに部屋に着くと、ちょうど仲居さんが部屋の前でお膳をもってきてくれるところだった。

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岩魚のお刺身。


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ワカサギの天ぷらは熱く、6時半に合わせて揚げてくれたらしい。


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鯉は甘めの味噌味で、苦手の小骨も皮もウロコもたいへん柔らかく、内臓もおいしくいただけた。


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お鍋は鴨鍋。
量が少なめでありがたい。


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ご飯は湯治のお年寄りに配慮してだろう、かなり柔らかめであったが、お米の味はおいしく、
皿、小鉢だけでなく、盛り付けも含めて、お膳全体から立ちのぼる清潔感があるのだ。






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露天は入る人がほとんどいなくて、独り占め。

外気もあまり冷えておらず、心ゆくまで楽しんじゃったわ~。


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男湯も人がいないので、ちょっとのぞいてみました。

あ~ 女湯より広め。
すごい勢いで溢れてます。


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男湯の脱衣所。

この宿は「建物は古いけれど隅々までお掃除が行き届き…」などという凡庸な表現では伝わらないなにか…

端正な人となりが造り出すなにか…

があるように思った。





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朝食は大広間で。

昨夜この広間でカラオケの宴会があったらしく、
ハウリングの音や懐かしの演歌なんかを歌う声がかすかに聞こえてきて、微笑ましかった。

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その宴会を楽しんだらしいおじいちゃんとおばあちゃんがたくさんいた。

気がつかなかったが、昨夜は土曜だったせいもあり総勢40~50人泊まっていたらしい。

私が岩風呂に11時頃に行ったときには、もはや寝静まって静かな館内だった。

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いつもは朝食を食べない私だが、
お昼を食べなくていいくらい、しっかりいただいた。





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いいお天気となり、ぬるめの露天は醍醐味。
上がったあとのお肌さらさら、しっとり!





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長靴を借りて散歩。
二股温泉郷、5~6軒の宿があるが…

なんかビミョーな雰囲気が漂う…  わたしゃ<権威>は好きじゃないからね~


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宿の対岸の道はまだ雪どけには程遠く、ときどき吹く風は冷たい。


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でも宿の前の道には日差しが溢れて、春の気配。


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昨日つぼみだったのに、今日は大輪の花が。





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「3時までは日帰りの人が来ますので、3時過ぎに行くといいと思います。その時間湯治の方はお昼寝してますから」って宿の人に言われたの。

3時まで我慢して、3時過ぎに行ってみたら~ 
誰もいない!


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いや~!  いいお湯!


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そして、必要最低限のものしかない武骨な風呂場の木戸やガラス窓が、ストレスなく軽快に開いて、
風呂場としての機能の在りようの心配りが見えるのである。

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年月を経て改修され続けたであろうこの風呂場。

媚びのなさ、が胸に響く。


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岩肌を伝う温泉はかなりぬるく、
私はこのお湯もまた溜めておいて入りたいと思った。


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冴え冴えと。






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本日も夕食は6時半にしてもらい、6時に岩風呂へと。

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昨夜、11時過ぎにここに入り、川音を聞きながら静かに湯船につかっていると、
突然背後からのボコッボコッという音に驚き、そして押し寄せてくる熱さに
「きゃ!」

振り返りながら慌てて移動しても大きな気泡がボコッとはじけて「きゃ!」

岩壁から離れても熱いお湯がどんどん押し寄せ「きゃ!」

まあ、深夜おばさんが風呂場できゃっきゃっ言っても…

すべて世は事もなし、なんだけど、そのお湯の噴出のあまりの勢いに這這の体で
慌てて湯船から上がってしばらく見つめた。

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岩の隙間から激しく、どこか荒々しくさえ見える大小の気泡は、熱いお湯とともに怒ったように出続けた。

まるで宇宙空間の新星誕生のようであった。
隙間から気泡が次々と生まれ、そして消えていき、湯面にはさざ波が立ち続けた。

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やがてゆるやかに、ポコッと小さく浮かんではじけたあとには、再びの静けさが戻り

気がつけば川音だけとなっていた。

ああ、2度とないこの瞬間を目撃し、立ち会えたのだ、いま、このとき。

そんな深夜の風呂場だった。





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本日の天ぷら、ヤーコン、ふきのとう、ウドの新芽、揚げたてで嬉しくおいしい。

なんのサービスか不明なんだけど
「飲み物のサービス、何にしますか?」って言われたので「では日本酒、お燗で」
昨夜も今日も付いてます。

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いたく満足。





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そういえば湯治の人たちは連泊していくので、毎朝の掃除機の音もあまりしない。
10時過ぎてそこら辺中で掃除機ガーガーやらないのもたいへん良い。

もちろんお掃除はちゃんとしてるけど、ふさがっている部屋が多いから、全館一斉に、とはならないのね。

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いいお湯でした。いいお風呂場でした。 ありがとうございました!





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11時にヤーコン号が「あすなろ荘」の前から出るので、またご主人がわずかな距離を車で送ってくださった。
小雨が降ってきた。

「岩風呂、とってもいいお湯で、上がった後も爽やかで、いままで味わったことのない気持ちよさでした」

ミラー越しにこちらを見ているご主人が笑顔で
「うちの先祖がツルハシで掘りました。入るとき熱いけど、出たあと気持ちいいでしょ?」
「内湯と露天のぬるめのお湯もすごく良かったけど、岩の隙間から出てくる熱いお湯は、本当に気持ちよかったです」
「岩から気泡が出てくるのを見ました? あそこの温度は60℃以上あるんです。うちは、みなさん、あの岩風呂を目指して…」

そう、あの風呂があればもう、露天はいい… 
しかし、惜しい!(私にちょっと直させてくれればな~ すごくよくなるのにな~)

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そうこうしているうちに、本日は大型の車が来た。

ご主人に見送られて車に乗ると、例のスタンプ帳をたたんだり開けたりしているおばさんたちがけっこう座ってる。


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外は雨だったけど、なんだかとっても豊かな気分で帰路に着いたのだった。









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