本日の天気予報で…
「明日はこの冬一番の寒気、各地とも強風波浪警報が出ております… 日本海側では強い風と雪にご注意ください。とくに山沿いでは豪雪が予想されます…」
あーー この機を逃したら後悔するわ!!
(2010年2月6日・7日 1人泊 @7,500円)
東京は風もなく、穏やかでいい天気だった。
昨日北温泉旅館に電話して「明日の土曜は込んでますか?」と聞いたら
女将さんらしき方が「今の時季はすいてますよ」とのことで、
では2泊!
山のほうから雪を降らせたあとの、おだんご状態の雲がどんどん流れてくる。
いいわね、いいわね~。
江戸末期に造られた部屋・松がおこた付きで1泊7,500円、明治期に造られた竹の部屋は冬は寒くて使わないそうで、昭和に造られた梅の部屋はおこたとストーブがあり9,500円だそうだが、
やっぱり創業期に建てられたものがその宿の本質。
ここは松でいきましょう。
那須塩原駅から那須湯本まではバス。
しかしそこから先のバスはないのでタクシーを使って宿の駐車場まで来て、その先は歩いて5分ほど下ってくださいと言われたので新那須でバスをおり、目の前のタクシー会社に行きタクシーに乗り込む。
(後で、湯本から1日2本くらいのバスがあることが分かった)
雪の降りしきる山道をタクシーがを登っていくと、左手に「殺生石」と書かれた文字が見えた。
殺生石… 甲子温泉から芭蕉づいているなあ…
「奥の細道」は、高校の古文の副読本であった。
古文はとんでもない授業で、日本の古典を教える教師と漢文を教える教師がいて、当然テストも2種類ある。授業時間が少ないわりには覚えることが2倍あって、なんとその上に副読本まで読む羽目になったのであった!
私たち生徒は恐慌をきたした。
そうでなくても… スダレひっぱり上げて自慢する清少納言にイラッとし、何とかの宮やら何とかの局やら次々と見境いなく女に手を出す光源氏に翻弄され… あーれー!今日の授業はまた違う女かい!
その上に「かえるボッチャ~ン」やら「岩にしみいるミンミンミ~ン」? かんべんしてくれー!
当然テストは古文・漢文・奥の細道、と3種類になるわけでヤマがかけにくく、
私たちはみんな頭を抱えた。
仕方ないので私は一番安易な方法、つまり丸暗記を選択したのであった。
なぜか漢文の教師担当の「奥の細道」の授業は、時間枠の少なさゆえに猛スピードで行われた。
「月日は百代の過客にして、行かう年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ馬の口とらえて老をむかふる物は…」
私は日本地図片手に(すごい勢いで北上する芭蕉の足取りを地図で確かめながら地図にマークをしつつ)丸暗記に専念したのである。
「奥の細道」の出だしはたいへん奇妙な感じであった。
なぜかというと、これから旅に出るというのに、全然楽しくなさそうなのである。「古人も多く旅に死せるあり。」とか言っちゃって。
旅立ちの句は
行春や鳥啼魚の目は泪
というなんだかよく分から~ん、なんで魚が出てくるんだよ!というちょっと鬱々としたもので、だったら旅行止めたほうがいいんじゃないの?などと考えているうちにどんどん歩いてあっという間に日光まで行っちゃうのであった。
現在私は、15~16歳のときの記憶が自分の記憶の古層にしっかりと残りそれが多少虫食いではあってもほぼ完璧に残っていることに、驚く。
時間切れで、先生が「ここから先は自分で読んでおくように」といわれた最後のほうはテストに出ないから覚えなかったが、そこまではいまでも鮮明に蘇ってくるのである。
もっとも、パラパラ見てみたら「奥の細道」の終わりは「やったぜ~!ここで終わりだ!」という感じではなく、なんとなくズルズルッと終わっているようであった。
「奥の細道」=せかせか、そして終わり尻つぼみ、というのがそのときの私の感想である。
しかし振り返って思うに、すべて教科書丸暗記しておけば、長じてから改めて解釈のフィルターを通して、ずいぶんと豊かな知識になっただろうに… 後悔先に立たず!
さて「殺生石」。
芭蕉はお伴の曾良とえっらい勢いで北上して日光を通って那須黒羽に入り、ここから馬にまたがりちょっと左に曲がって那須湯本の温泉神社に、その後山を登って硫黄臭漂う「殺生石」を見ている。
それから90度東に曲がって芦野に行き、そこで尊敬する西行も見たっていう柳を見て句を作ってから、福島の白河の関を越えるが。
その時の句
田一枚植えて立ち去る柳かな
え?これって主体は誰なの? 芭蕉が田植えしたの?それとも田植えしてる人がいてそれを芭蕉が見てたの?
そしたら先生が「これは諸説あって、どちらともいえる」って言うわけ。
でももし芭蕉がお灸の痕のある足のわらじを脱いで人の田んぼで田植えしだしたら、
お伴の曾良はボーッと見てるだけってわけにはいかないでしょ? きっとあわてて自分も田んぼに入らなきゃならないんじゃない?
ということは2人で人の田んぼに入って田植えした、というすごく不自然な状況になるので、
やってないんだけど「自分で田植えした」という句にしてみました、ということもあるのか、と質問したら
先生に「自分の想像するまま、どうとらえてもいいのが俳句だ」と片づけられて、すっごく俳句に不信感持った句なんです、これ。
たぶん俳句の本質論になっちゃうからね~ 先生はひたすら先に進みたかったので質問に危機感もってさっさと切り上げたかったみたい。
と…
どっぷりと「奥の細道」に浸ってたら、坂の途中、目の前にバスが斜めに止まってタイヤが空回りしてた。
タクシーの運ちゃんが「あ!なんてやつだ!こんなとこで止まりやがって!!」
バスは空吹かししてて動かない。
「あー!!こういう日こそバスは真っ先にチェーン巻いとくべきなんだ!なんてやつだ!」
そしてしばらくして、やっと道に通る隙間ができたときに…
私の乗っているタクシーはアクセルを踏んでも前に進まず…
ズルズル下がってまたアクセル踏むもまだ進まず…
またズルズル下がって…
ついに運ちゃんは言った。
「お客さん… チェーン巻きますから… あ、メーターは止めときます」
(… バスと同様、事前に巻いとけーーー)
15分後、雪まみれの運ちゃんが乗り込み、吹雪の中を走りだした。
前方からタクシーがやってくる。どうやら先に北温泉に客を送ってきたらしい。
双方窓を開け
「行けるか?」
「あ、ダメダメ。あそこで降りてもらうしかないな」
「そうか」
なに? 降りてもらう?!
で、降ろされたの、北温泉1,140mとか書いてある看板が見えたとこで。
雪はそうとう激しく降ってきたし、遭難するのはいやなので念のために
「一本道? 分かれたりしてない?」と聞いたら、
「大丈夫です。道なりにずーっと歩くと駐車場があるから、そこからまた下って10分ぐらいかな」
ダウンのジャケット買って以来初めて使うフード、端の紐を引くと顔の部分がキュッと小さくなる。
旭川空港で買った靴の滑り止めを装着、2,600円ほど払って手袋をして、降り立つ。
歩きだして2~3秒後に振り返ったらタクシー、もはやいなかったね~。逃げ足早し。
でもね、なんかすっごく嬉しかったの~
こういうふうに吹雪の中、まわりは一面の白さの中を歩くのは生まれて初めてなので。
四駆の車のタイヤ跡を踏んで歩いていると体はぽかぽかとしてくるが、足と手と顔の一部がすごく冷たい。
おまけにここで携帯が鳴ってちょーびっくり。よりにもよってここで鳴るかい… ま、遭難しかけても大丈夫ってことね。
30分ほどせっせと歩くと、駐車場にたどり着いた。
この下に降りて行くわけね~
あ、すごい坂だ!
グレーに煙る向こうにはきっと山々が連なっているんだろうが…
何も見えず。
急な坂を、ゆっくり滑らないように降りて行くのがやっと。
つづら折りの急斜面を5分ほど、あ、見えてきたかな?!
見えてきました!
いつでも…
旅館に入る前の…
このドキドキ感が好きなんだよね~ 車で乗り付けちゃうとこれが損なわれる。
2列に張り出す建物の間の階段を上ると玄関。
湯治宿の典型的な造り。
着いたわ~~~
多分雪だるま状態だったんだろう、2~3人いた人が、こっちを見た。
あったか~い! 玄関で燃え盛るストーブがすごく有難かった。
デイパックを置くと真っ白になっていて、ジャケットを脱ぐと一部パリパリと音がする。
手袋でパンパンと体中の雪を払い、ブーツを脱いでフロントに。
記帳して、ポットを持った中国人らしいおばさんにニコニコと案内され、
風呂の位置とか説明されるも、複雑でいまいち把握できないが、
多分湯治宿の造りのバージョンだから直方体3個合体の造りだろう、という発想を持てば
その後は迷うことなし。
器量よしの猫が2匹いる。
3階、松の332号。
おばさんが
「この部屋が一番眺めがいいのね」
あ、そうなの?
4畳半、出窓付き。おこたはすでに暖かくなっている。
トイレは2階とのこと。
出窓張り出し部の下に襖がなく、ぽっかりと空いていて、そこからの冷気が気になるが…
これで十分。布団を敷いてこたつに入り、手を伸ばせばこたつから出なくてすむ広さ。
うーん… 晴れたら眺めがいいんだろうね。きっと。
窓は2重のガラス窓。
天井が低く、外から鍵はかからない。内鍵はあり。
鮮明に映る小さなテレビ、小さなからの冷蔵庫、そしてなぜか除湿機?!あり。
安政年間に造られたという部屋と廊下。
私の部屋より廊下のほうがあったかいの…
玄関部に高温の温泉を流していてその蒸気を館内に回して暖房しているので、どうやら湿気が多いようである。
廊下にも除湿機あってフル回転。
きしみ、黒光りする古い階段は、幅も狭く慎重を期す。
この下から温泉の湯気が上がってくる。
ところどころこういうふうになっているが、御大層な感じではなく、何だかふつーにある。
さて館内、ざっと頭に入ったところで、温泉プールに行きましょう。
今回例の混浴露天用まといもの持参。
あそこに入る前にあの湯小屋の中にある内湯で体を温めて…
しかし備え付けのサンダルで歩くと雪がどんどん裏に付いて、歩けなくなってしまうのだった…
なんで長靴とかにしてくれないのかねぇ…
いや~ たいへん難儀をしてたどりつくと、内湯の女湯のドアが凍って動かなくてさ!
脱衣所は雪が積もり外と変わりない状態。
とりあえず服のまま風呂場に入り、お湯かけてドアを動かせるようにしてから、雪の付いたかごを風呂場に置いてそこで服を脱いでお湯に入る。
つまり昨日・今日、誰もここに入っていないんじゃないのか?
熱っ!!
熱っ熱っ!!
いやそうでもないのかしら?
体が冷えているだけで、けっこうちょうどいいのかも。
しばらくすると、体がとても温まってきたので…
いざ温泉プールに~。
サンダルは役立たずだから裸足でね。
ぬるくて広くて、すっごくいい!
雪はじゃんじゃんと降りしきり、見上げるとあとからあとから降ってきて…
湯口からは大量の高温のお湯が落とされ…
ここの周りはけっこう温か。
湯口の真下のお湯の中。
ひぇ~~~い 独り占めだよ~~~ この広い温泉プール!
道の上から人が宿に向かって降りて来る。
1ダースくらいの人たちが2~3人のグループとなって
宿に向かいながらこっちを見て行く。
「こんなときにあそこに入ってるのがいるよ」っとか言ってるんでしょうね、きっと。
でもってだれも入ってこないよね、きっと。
もう、すっばらしい吹雪。でもお湯の温度は隅々まで一定で、
もちろん30度ちょっとくらいのぬるさなんだけど、この天候でこの広いプールを一定の温度に保てていることに驚いた。
湯口以外にもどこか下からお湯を投入しているのかもしれない。
もちろん、プールひと回りしましたよ。
湯小屋の方向。
みるみるうちに雪が積もっていくのが分かる。
万々歳なのだ~ やっぱ、天気予報見て来るべきよね。
と十分堪能したあたりで、1人男の人が入ってきたので、そろそろ潮時かと。
上がる。
また裸足で内湯に行き、熱いお湯に入って満足。
そういう状態で入るのでこの内湯、温度がどのくらいか皆目分からん。
食事は食事処で5時45分から。
畳部分と、板の間部分がある、昔ながらの造り。入り口に中国人のおじさんがいて
「お部屋何番?」と聞かれて、席を教えてくれる。
1人泊は4人並んで板の間の端に。ちょっと背中が寒い。
日本酒熱燗でお願いしたら、レンジでチンしてあっという間に持ってきてくれた。
こんな感じ。カップルとか、しかし圧倒的に男性が多いみたい。
女将さんは「すいてます」って言ったけど、40人はいるんじゃないかな。
松・竹・梅と、お部屋の料金は違ってもお食事内容は同じ。
宿泊料金は安いけど品数も多く、ご飯もおいしい。
でも、おかずはみんなさめてて、トリのから揚げも冷たい。
味噌汁などはやや温かいけど、来るのが遅ければもちろん冷たくなる。
熱いのは自分で淹れるお茶だけです。
味に不満はないんだけどな~ 冷たい食事が嫌いな私は、電子レンジを借りて温めたかった。
しかし、よく磨きこまれた板の間で食べる夕食の雰囲気は、たいへんよかったのです。
ちょっと寒いが。コート着てくればよかったか。
おまけに隣の男性とお話したら、どうやらさっきプールに入ってきた男性だったようで、
物好きは私だけでないことがわかり、<お友達>になりました。
温泉で知り合う<お友達>は、みんないい人ばかりです。
さて、夜は女性専用内湯の「芽の湯」に。
新しくできたここのお湯は、竹の間のブロックの上にある。
だれもおらず、縦長の広い風呂場の窓には氷が張っていた。
こういうのは北海道では見かけないわね。
屋根と壁の間が開いているので、そこから雪が…
内湯に積もる雪、こんなのも北海道では見かけない。
熱く、たっぷりとしたお湯が湯口から押し寄せてくる。
カランはなく、新しく造った風呂場でも、湯治宿の風呂場に徹している。
朝食。7時半から。
さめてるけどおいしくいただいた。
食事処の柱の彫り物。こういうものが随所に。楽しめる。
値打ちのあるものはなさそうだが、古くからあるものがそのまま残っていて埃をかぶっている。
館内探検したら面白そうだった。
玄関の温泉は今日もモウモウと湯けむりを上げて館内を暖房している。
雪はやみつつあるが、猛烈な風が細かい氷を巻き上げ、木造の建物が激しく揺れているような音を立てる。
小さな雪崩が起きて帰りの人々の足を止めさせ、
女将さんはその人たちの休憩用の部屋を用意したり、電話で道の状況を聞いたり、てんてこ舞いだった。
あまりにも急激な雪で、役所のやるべき道路の除雪作業が間に合わなかったらしい。
ひと段落したようなので聞いてみたら
「こんな状態になったのは初めてです」とのことだった。
日帰り客も多いので、休憩所もある露天。
左は男湯のドア、右手に女湯。
小ぶりの露天。
激しい風で、桶が浮いている。
桶、流れないようにちゃんと紐付き。
なかなかいいですね~
おまけにぬるくて私向き。
ゴウゴウという音と、激しくしなる木々、逆巻く雪を眺めながら、
ちょっと見られない風景とお湯を満喫いたしましたです。
雪のずっと下のほうに、川が流れているのが見えた。
雪と風が造った白い装飾。
ぼーっと見上げてると、バキッと音がして、風にあおられてツララの断片が落ちてきたりするのだった。
このお湯の温度なら、1時間入っていても大丈夫。
お湯から上がってベンチに腰掛けたら、窓の外に堰が見えた、あ、川がよく見える…
こっちって… つまり男湯の露天…
なにっ?!!
こんな強風で誰もいないの分かっているから、ガバッと男湯開けてみたら~!!
なによこれーーー!!
男湯のほうが断然いいじゃーん!
許せん!許せん!許せん!許せん!許せん!許せんのだ!!
許せん!許せん!! 11時までに頼んでおくとお昼を作ってくれる。お蕎麦。
部屋まで持って来てくれる。アツアツでふつーにおいしい。
昼間の「芽の湯」
女湯はここがあるからあの露天で我慢?
そんなの許せん! でもこの風呂はとてもいいのよ。お湯は熱め。
湯量豊富。
仕切りの板があり、仕切りのこっち側は幾分ぬるくなっているが、全体にかなり熱め。
汗が出てきて長風呂は無理。
こちらが長く取られた上がり湯の桝。このお湯は相当ぬるめで、こっちに浸かりたいくらいでした。
文句言ってますが、なかなかいい風呂です。
この宿の有名な混浴風呂はね…
2階にあるの。
洗面所の突き当たりにあって、ジャラジャラの暖簾がかかってるの。
これさ、逆光で透けて見えるんだよね~ おまけにこのすぐ向こうが脱衣所なのよ。
中はこんな感じ。お湯はすごく熱く、おまけに洗面所に来たおじさんが暖簾分けて気軽にのぞくわけ。
悪気はないんだろうけど、たいへん気軽にのぞいてみるのね。
なんだか落ち着かないので、1回しか入りませんでした。別に天狗好きじゃないしね。
2日目の夕食。全部変えてくれている。
<お友達>はこの宿に度々来ているようで、今回の荒れた天候で断水したことなどを話してくれたのであるが…
「え?断水?」
「トイレの水、出なかったでしょ?」
そういえば昨日トイレの水が出ずに、置いてある桶から水を汲んで流したのだが、私は冬場のこの宿はこういうものかと思って気にしなかったのだけれど、じつは水道が凍って断水になっていたらしい。
洗面台の水も出ずお湯はジャンジャン出しっぱなしで、これも私はお湯しか出ないものだと思ったのだった。
とにかく宿にとってもすべて初めての大変な事態だったようである。
プールに行くためのサンダルも、いつもはあれで十分用を足すものだったようだ。
天ぷらも鮎も、冷たくて残念…
でもそんな贅沢言わなければ、おかずもバラエティーに富み、おいしくいただける。
夜、雪はやんだが激しい風が収まらず、温泉プールに入りたい私はヤキモキした。
このこはみみちゃん。もう1匹はききちゃん。体型が違うのに、尻尾の模様が同じで、はっきり同じ血筋と分かる。
宿の人に「兄弟ですか?」と聞いたら「いとこだよ」とのことだった。
2匹は仲が悪くて縄張り争いしているらしいが、こんなに広い宿だから、縄張りったってね、果てしないわね。
人間慣れしてて触らせてくれるが、触られても全然嬉しそうじゃないのだ。仕方ない触っても許す、みたい。
風がやや収まって星が見えてきたので、プール突入。
その前に入った内湯は…
これ湯小屋の中… 雪景色…
これ女湯の脱衣かご…
私、サンダルに懲りて長靴借りて履いてきたから。
いやはや、まだ凄い風。
<お友達>が先にプールに入ってたの。
ちょうど出るとこに私が行ったもんだから、またお付き合いくださるって言うんだけど
ちょっと寒そうで気の毒…
お湯の温度はそうとう下がっていて、おそらく20度ちょっとか。
でも私、ぜんぜん平気なの、この温度。
空には星が輝いていた。ただし周りがかなり明るい照明なので思ったほどではなかったのだが、
雪景色と星空にいたく満足。
風が吹きつけるので顔はめっちゃ寒いんだけど、見上げるとすがすがしい星があり気持ちよかった。
<お友達>さすがに寒くなって切り上げていき、ひとりでプールのまん中に行ったりしていたのだが、ちょっと湯口に近づいてみたのが大失敗だった。
なまじ湯口の温かいお湯に当たるとそれまで感じていなかった寒さが身にしみ震えあがってしまうのだ。
もっと入っていたかったので残念だったが、早々に上がるしかなかった。しかし、いい温泉プールだった。
内湯に浸かって混浴露天用まといものをお湯でゆすいで絞ったら、ジャッと茶色の水が出て驚いた。
ここのお湯、無色透明なんだけど…
え? 化学変化でも起きたかな?
思い出した!これを最後に着たのは<二股らぢうむ温泉>! あそこの成分が残っていたようで、もちろん洗ってあるんだけど、しっかり繊維に残っているのが出たんでしょうねー 改めてあの成分の濃さにびっくり。
二重窓の氷がキラキラ溶けていく。
とても爽やかな朝。
昨日と違う朝ご飯。
顔を洗うのも歯を磨くのも、お湯だけ。
お湯はとっても景気良く出しっぱなし。
露天の日差しも優しく、風もまったくやんでいて、いい日よりだった。
しかし、あれ?
ちょっとお湯が熱いかも。
どうやら昨日は強風で温度が下がっていたみたい。
うーん… 熱くてあんまりまったりできん…
そうか、この風呂、そんなにぬるくなかったのね。
でもとてもいい経験ができた、いい宿だった。
駐車場までタクシーを呼んでもらい(もう除雪してあるのだ)、温かな日差しを考えて、着るものを1枚減らす。
玄関の戸を開けて、女将さんがお気をつけて、と挨拶して見送ってくれた。
ききちゃん、またね~
温泉プールでは、2人の子供が楽しそうに滑り台をおりて遊んでいた。
そう、「奥の細道」ね
栃木を抜け福島白河の関でやっとここからだ!ってなった芭蕉は、その後もすごいスピードで福島を抜け宮城県・松島に入り、憧れの松島に興奮して夜も寝られずに俳句も作んないのであった。
代わりに曾良の句を入れたりして。
なんだよ~ 旅に出る前には「松島の月先(まず)心にかかりて」とか書いてるのにさ~。
そしてブーブー言いながらも丸暗記、功を奏してテストでは結構うまくいったのだった。
金沢で一笑という若い俳人が早逝し、会うことを楽しみにして旅してきた芭蕉がその供養の塚の前で
塚も動け我泣声は秋の風
という句を作り
ど、どうしちゃったんですか、そ、その激情ぶりは… と、私はびっくりしたのである。
それまでの芭蕉のイメージと全然違う驚くような句をもって、「奥の細道」の授業は尻切れトンボンに終わったのであった。
この旅行紀において疑問に思うことは誰でも同じとみえて、芭蕉隠密説とかあるようである。
いずれにしても多感な高校生に、芭蕉とは「かえるボッチャ~ン」だけではないおじいさん?おじさん?であることを知らしめてくれた偉大なる「奥の細道」であった。
はるか山の向こうを、野越え山越えてくてく歩き、宮城から岩手にちょっと入り、戻って山形をうねうねと横切ってから日本海に辿り着き、上の秋田にちょっと入ってから戻ってそのまま日本海の海岸線を福井まで延々と下る 「漂泊の思ひやまず」 の150日間。
芭蕉さん、もちろん優れた俳句を数多く残したあなたの<漂泊の思ひ>には遠く及びませんが…
私の温泉旅もまた…
どこかにかすかな<漂泊の思い>が… あるのかもしれません。
「古人も多く旅に死せるあり。」
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