塩原温泉 大出館

(2009年11月26・27日 1人泊 @10,650円)



塩原温泉 大出館

ミセス温泉が塩原の大出館に行ったっていうんで
「どうだった?どうだった?」 って聞いてみたら

塩原温泉 大出館

「あら、料金も1万円でまあ安いし、お部屋も川の見える部屋だったし、お湯もとっても良かったわよ」

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私は長年あそこの<墨湯>に入ってみたかったのだ。
塩原温泉(柏屋 あづまや)は久しぶりだし、1人で行く宿としては、手ごろでいいかも。

電話したら「塩原バスターミナルからの送迎は2名からなんですが、2泊なので、送迎いたします」
ありがたや~  バスターミナルからは、タクシーを使うしかないのだ。





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新幹線の那須塩原駅からバスに乗るときに宿に電話、バスターミナルに若女将が迎えに来てくれていた。

塩原温泉の奥、山道は急で細く、カーブが多い。冬は路面が凍結する。
若女将は6年前に戻ってきて、この道を通る客の送迎を2年間お父さんに禁止されたそうである。
2年間の訓練の後、お許しが出たんだそうな。そんな道である。


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塩原温泉の中・小規模の旅館の典型的なたたずまい。

フロントに大女将がいてこのあたりを孫がピョンピョンと横切ったりすると、これぞ塩原!という感じである。
この宿はピョンピョンしていなかったが。

宿によってはフロントのカウンターの上によじのぼってピョンピョン跳ねていることもある。2個体くらい。

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入ってすぐのフロントは3階、宿の人にエレベーターに案内されて1階に降りると、トイレなしの部屋が並んでいる。
突き当たりに風呂場。
ノンアルコール類の自販機、足つぼマッサージ機、給湯機と流しがある。

ポットは電気ではないので、お湯がなくなったら給湯機のお湯を自分で入れる。が、この給湯機はいつ行っても80℃以上にならないのであった。
う~ん… なんとも半端な温度だ。


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男女別のトイレ。和式、水洗。


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8畳和室。4畳くらいの廊下部分。洗面台(お湯は出ない)、冷蔵庫。

フェイスタオルと歯ブラシはあるが、バスタオルはついていないので、借りる。200円。



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窓は大きく、ちゃんと開く。もう虫はいないので開け放つと気持ちよい。

石油ヒーターがあって案内してくれたおばさんが点火してくれたが、おっそろしく強力でぼわわーっという音とともにすごい熱気が。
本日暖かいので、すぐ止めた。


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窓の外にはすぐ下に旅館。その向こうに細く川が見える。


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墨湯は混浴で女性時間あり。
14~15時と19~20時半。
「いま女性時間ですからね、入ってきたら」と言われてすっ飛んで行く。

14時半。


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1人、先客がいた。

「こんにちは~」

その年配の女性は、大きなペットボトルにせっせと墨湯を入れている。

ここはどの源泉も飲泉可。


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「あちちっ!」

「そうなの、けっこう熱いのよ、ここ」
入れていたペットボトルがいっぱいになったの、でおばさんは栓をしめる。

隣の白いお湯もかなり熱い。

この女性は那須に泊まっていて、ここには日帰りで来たそうである。埼玉から車を運転して1人で来るんだそうな。
「このお湯、何に効くのかしらね? 来るたびに持って帰って飲んでるんだけど」
どうやら飲泉好きらしい。
しかし、効能も知らずに飲んでていいのか…

「さっき若女将さんが、便秘に効きますよ、って言ってましたよ」


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「あ… 便秘ね… 胃腸にいいのかしら? 胃腸にいいお湯ってけっこうあるわね」
「そうですね、峩々温泉に行きましたけど、あそこのお湯は胃腸に効くそうです。胃の上にかけ湯したりもしますね」
「そうなの。あたしは行ったことないけど。
あたしね、那須の老松温泉に車で月3回くらい行ってね、あそこのお湯飲んで、家にも持って帰って飲んで、糖尿が良くなったの」

「へえ~! 私も喜楽旅館、泊まりました」

「あら、そう?! いいわよね、あのお湯。飲んでみた?」

「どこも悪くないので… ちょっと舐めてみたけど、すごく濃くて複雑な成分の味ですよね。ぬるいから好きです」

「あたしもぬるいから好きよ、あの温泉」


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「あたしね、糖尿が悪くなって、医者にインシュリン使わないとダメだって言われて、それから老松にせっせと車で行ってね、あのお湯飲んで次に検査に行ったら『なんだか良くなってるから、インシュリン使わなくていい』って言われたの」

そういえばあそこのご主人は、老松の飲泉で糖尿が治る、と自信を持って語ってくれたけど。

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そしておばさんは

「でもね、あたし老松のお湯飲んでるってこと、医者には絶対に言わないの。 絶対に」

と、ちょっと不敵に笑った。


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「ここのお湯ね~ 持って帰ると色が変わるのよ」 とデカいペットボトルを指さした。

「成分が沈殿するんですか?」

「いや… 沈澱じゃなくてね… なんかこう… 変わるのよ… なんかね…」

どうやら、言うに言われぬ状態に変わるらしい。

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そして飲めるとなると何でもいいから飲みたくなってしまう飲泉フリークみたいね。

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硫黄が強いので、換気扇がかなり下についている。

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壁や天井は付着物でごわごわ。金属は黒ずみ、窓はかつては開いたのだろうが、いまはびくともしない。


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細く開いたまま固まってしまった窓の隙間から外を見ると、源泉がもれて景気よく流れ落ちている。





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墨湯から女湯への移動は、みんなバスタオルを巻いて戸をあけて隣の女湯に移動するんだそうな。
「いちいち服なんか着てらんないわよ」

確かにね。



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墨湯の隣にあるのとは違う源泉らしい。


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ぬるめで心地よい。アルカリらしく、肌が疲れない。
飲んでみるとどの源泉も苦味がかなり強い味で、飲めなくはないが旨くはない。

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ここでちょっとリラックスしてきた頃に…





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下の露天に行くことにする。

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本日お掃除されたらしく、まだいっぱいになっていなかった。


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無色透明なお湯が落ちているが、岩の下あたりからすでに白濁が始まっている。
露天はいちだんとぬるめで、あまり寒くないのでちょうど良い。


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まったりしていたら、さっきのおばさんもやってきて、今度は近所に住んでいる大金持ちでいながらとんでもなく吝嗇家のおばあさんのお話しを聞かされた。

多少誇張もあるだろうが…
「だってさ、履物買う金が惜しくてスリッパで自分の畑に行って、体が具合悪くても医者に行く金が惜しいから行かずに、転んで畑の中を這ってんのよ」

そんな漫画みたいなこと… 信じられん!

「本当なのよ!私がいらないコタツカバーの話をしたら、それをくれっていうからあげたんだけど、20年ぐらいそれ使っていて、いまや擦り切れて向こうが透けて見えてんのよ!」

「はあ~!! かわいそうな人なんですね。僅かなお金で、こんなふうに足を伸ばしてのんびり、幸せだな~って思えるのにね」

「そうよ、ほんと!こうやって気持ちよ~く過ごせるのにね~ じゃあお先にね」






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おばさんはやっと去って行った… 嗚呼…

じつは彼女に例の黒ずんだ虫刺され痕を見られたくないので、先に出てほしかったのだ。
とんだ長風呂になってしまった…  ぬるいからのぼせないけど。

いや、自分ではあまり気にしていないのですが、増富温泉で一緒にお湯に入った方が
「やいと(お灸)の跡?」っておっしゃって。

ちょっと他人に一抹の不安感を与えるんじゃないかと…





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夕食は部屋食。6時過ぎに持ってきてくれる。

いや~ これも、これぞ塩原!って感じ。

取りとめなく、品数多く、みんな味が濃く…


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牛肉の陶板焼き以外は全部温かくなくて… とくに旨いものはないが、まあなんとか食べられる…

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あ、串カツの玉ねぎが甘くておいしい。ご飯は致命的に柔らかすぎ、水の量が2割多くて入れ歯なしでも食べられるようになっていた。







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夜の露天。

なんでこんなに暖かいのだ? 
もうちょっとキュッとした寒さを期待していた私は、
夜になってもあんまり冷えないので、ガッカリであった。



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暗い湯面には、昼間は見えなかった湯の花が、明りに照らされてくっきりと浮かんでいる。


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けっこう客はいるのに、独占であった。





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水2割減らしてご飯炊いてくれ~  おかずは文句言わないから~~

ネチネチのご飯に納豆はきびしい~~~


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あ… 露天から湯気が上がってる!

この風景はいつ見ても心安らぐ。



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明るい日差しに満ちた女湯の内湯。



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ふんだんにかけ流されて落ちていく。





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だれもいない露天満喫。

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上の屋根はわりと最近建て直されたらしい。

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基礎はなく、柱と屋根の自重で岩の上に載せられているだけなのだが、棟梁はいい仕事している。





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下の川まで散歩。

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直線距離にするとたいしたことはないのに、山沿いに大きく蛇行してかなり歩く。

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下の2軒の旅館まで、ヘヤピンカーブをそうとう下る。

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やっと川に出る。

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この辺は流れが細いので景色はあんまりパッとしない。
景観は下流のほうの福渡(ふくわた)や畑下(はたおり)あたりのほうがダイナミック。

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あの坂を2~3分登れば大出館なんだけどな~ 階段造ればすむことなのにね。

たぶん、山持ち、土地持ち、源泉持ち、の塩原の旅館の境界線問題にからむことなんでしょう。




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またえんえんと遠回りな道路を歩いて宿へ帰る。


「1人で入浴は固くお断りします」と書いてあるので遠慮していた貸し切り風呂に入ることにする。
本日は人も少なく、昨日だってあまり使われなかったし、それに1人泊は料金も高めですしね。



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ここもまた違う源泉のよう。


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あ~ これ墨湯じゃん!




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ここは窓が大きく開けられて、換気扇もない。
とても静かで落ち着ける。

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黒い湯の花だけでなく、白いのもまじっている。そして子供も入れるくらいのぬるめの温度。


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湯の花の感じもちょっと違っている。

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なんかすごくいい風呂場に出合った感じで、とっても嬉しくなってしまった。

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静かに心地よく入っていることの喜び。

そう… 年とともに、失ったものはたくさんある。

若さ、お肌のハリ、重力に負けないたるまないお肉、体力、視力、好奇心、感性、
先に逝ってしまった友人たち、先に逝ってしまったパートナー…

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だけどそれ以上に得たものはなんとたくさんあることか…


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衰えた記憶力を叱咤激励して自分で勉強する楽しみ、新しく識る世界、新しく出会う人々、
そして…




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温泉に入れる喜び。

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温泉に入って心静かに、何もかも忘れて、たゆたっている時間を持てること。

なんて貴重なしあわせな時間。




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素敵なお湯といい風呂場だった。


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夜、また入ろっと。






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海老フライ2本! アユは半なまでした~ お肉もなかなかおいしいんですよ、柔らかくて。蕎麦も茶碗蒸しもがんばってるんです。
問題はご飯ですけど、食べるのを少なくすればあんまり気にはならないかも。


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月輪ができていた。

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となりの男湯(混浴って書いてあるけど、実質男湯)から人が上がってしまうと、静けさに満ちた貸し切り風呂。

とろみのある感じのお湯がとても優しく、窓から入ってくる夜気も心地よく、時がたつのを忘れる。





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朝も独占。

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しかし上がって内湯に行くと、待ってました!とばかり、入れ替わりに露天にいった人がいた。

できれば独占したかったのでしょうね。

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いや~ いい貸切風呂だった!

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自分にしっくり合う風呂とお湯に出合うと、すごく充実感に満ちる。

お湯から貰える力が鮮明になる気がする。



明日からまた頑張れる!と思えるのだった。











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