奥美利河温泉 山の 家

(2010年10月16・17日 1人泊 @5,575円)






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暖かく、いいお天気だった。


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風が強く、いつもちょっと寂しげな長万部駅。
バスが来るまでの時間があるので、駅前を散歩。


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少し離れたところに駅弁屋さんがある。車で乗り付けて、何人かの人が弁当を買っている。
おなかはすいていないので、私は買わないが。

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メインストリートはシャッター通りとなっていた。
歩いてみるも、なにもないので駅に戻る。


left奥美利河温泉 山の 家




時間どおりに来たバスに3人ほど。

ガラス越しの日差しが眩しくて暑い。


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ずーーっとススキの原野が続く。海風に穂が揺れる秋の日。

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40分ほどでクアプラザピリカに到着。
受付で若いお嬢さんが
「すぐ車を出します。ちょっとお待ちください。
あの… 山の家、虫が大量に発生してまして…」

虫?
「カメムシが大量に発生してまして。大丈夫ですか?」
「あ、カメムシ。去年もいましたよ。気にしません」
「それが…すごくいるんですよ。すみません」

謝ることではありません、虫と蛇のいるところに出かけるんですから~

スーツ・ネクタイ姿の、前回と違う課長さんが山の家まで車で送ってくれる。

途中、丸々と太ったキツネが何かくわえてピョンピョン。

車のスピードを落としながら
「キツネはまだ素早いからいいんですよ。
タヌキはモタモタしてるから、よく轢かれちゃうんです。
北海道の人、スピード出すでしょ。
それもタヌキが子供連れていたりするとね…」





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いつか乗ったタクシーの前にタヌキが出てきて
運転手さんがクラクションを何度鳴らしても道の端に行かず真ん中をウロウロ、
ついに運転手さんが車を止めてしまったことがあったけど。

もし急いでいたら轢かれてしまったかもしれない。ワナワナ… 困ったものである。

そんな会話をしながら到着。

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確かに<カメムシの館>となっていた。

管理人さんともう1人の女性が、掃除機、箒・チリトリ、ガムテープのいずれかをいつでも手にして
せっせと取っているが…

いつのまにか湧き出してその辺じゅうをゆっくりと歩いている。

<ペップリ虫>と呼ぶ地方もあるようで、くさいくさいと言われるが、
幸いなことに私はまだくさい思いをしたことがないから、
ノロノロ歩いているこの虫をむやみにガムテープで取る、という殺生ははばかられる。

テーブルに置いてあったアンケート用紙でカメムシをすくいとってゴミ箱に入れ、
色とりどり、20~30匹くらいたまったところで窓の外に捨てることにした。

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窓を開けると、
変わらずに懐かしい風景があった。
嬉しかった。


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どうやら塗装しなおしたようで、内湯の壁もクリーム色にテラテラになっていたが、
静かにお湯の落ちるさまを目にした途端に安らぎを感じて、思わず深くため息をつく。


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こんな稀有な心地よさを1人で味わえるなんて、とびっきりの贅沢、このかけがえのなさをありがたいと思う。





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雲が流れていく。

木々を眺めていると、時折思い出したように、ハラリと1枚、黄色い木の葉が落ちていく。


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澄んだお湯は豊かに、滝のように音をたてて流れ、押し寄せてくる。

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ずいぶん葉が落ちているが、
これから染まる葉もあるのかもしれない。


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空は青く青く、遠い。


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静かで、
秋の木々の香りがした。






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ほとんど前回と変わりない夕食が並んだ。
年配の管理人さんと親しくお話ししていたら
「まかない食の鮭のお汁を食べるか?」と聞かれて、ジンギスカンはあまり食指が動かなかった私は
すごく食べたかったんだけど、でも、管理人さんの分が減っちゃうんじゃないの?

「いや、鍋いっぱいあるから。今年獲れたての鮭だよ、うまいぞ」

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で、いただきました~! お椀にたっぷり。

鮭も野菜もたくさん、脂がのった鮭は、白身魚のような上品な旨みさえ感じられて
ジャガイモもホクホク、おいしかった!

(これでおなかいっぱいとなり、ジンギスカンは全部残ってしまった)





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露天に比べ内湯のお湯がかなりぬるくて、だからじっくりと長風呂、
まどろみながら幸せな時を過ごした。





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自然の贈り物の中に浸れる、特別の時間だと思う。






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管理人さんが、朝ご飯のお味噌汁だけでなく、昨夜の鮭のお汁も付けてくれました!





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遊歩道にねじれて倒れていた木も取り払われ、去年と同じように、もうじき山に冬が来る。

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私のHPを見て、山の家の源泉は近くの洞窟から湧き出している、ということを
教えてくれた方がいて、そういえば敷地の入り口脇に階段があったな、と。
管理人さんに聞くと、階段の上から洞窟が見えるとのことで登ってみる。


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岩にポッカリと穴が開いていて、何年かに1回テレビの取材とかでお役所の許可を取って洞窟探検とかするそうな。
かなり深いらしく、しっかりとしたケービングの装備と経験者の案内のもと、行われるらしい。

地下から温泉が湧き出しているが、露天風呂に流れているものと同じ源泉かどうかは不明で、
もしかすると別の源泉かもしれないとのことである。


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フラッシュをたいて撮ってみたけど、写ったのはこの程度です。


       

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       静かな道をしばらく散歩。
      


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小動物の落し物。    キツネかな?  タヌキかな?

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「ほら、そこに写真があるよ」と、
管理人さんが山の家の玄関に飾られた写真を指差した。
なかなか本格的な洞窟であった。






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「Sさん(私と管理人さんは、名前で呼び合うようになっていた)、去年いた課長さんはどうしたの?」と聞くと、
「あ? ああ、辞めたよ」という返事だった。

Sさんは2年前から山の家の管理人となった。
5月から10月の終わりまでここの管理をし、11月から春までは自宅で過ごす生活をしている。
その年の仕事が終わって自宅で過ごすようになると、飼い猫がそばに付きまとって一緒に寝ようとするんだって。


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今年の北海道は災害が多かった。
ここも例外ではなく、8月に土砂崩れで道路が通行止めとなったらしい。

来るときに車の中で
「夏休み、お盆休みのときに、休業を余儀なくされてしまいました」と、
新しい課長さんが言っていた。

目の下の小川は、かすかなせせらぎの音をたてて、いまは優しく流れている。





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管理人さんのほかに、朝やってきて夕方帰る女性が1人。
とにかく2人で必死にカメムシ駆除の毎日のようである。

「10月に入ったら異常に出てきたんですよ。いやですよね、すみませんねえ」

ジンギスカンはいりませんと言ったら、連泊なので今日はうどんすき、だそうです。
夕食の支度をすると、女性は「また明日」と言って帰っていった。

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けっこうシンプル、野菜と揚げとうどん、の鍋で、もっちりとおいしいうどんだった。





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食事をしながらSさんに
「内湯のお湯をしぼってますか?  露天よりかなりぬるめになっているけど」
と言ったら、本日もう1組泊まっていて、町民の割引券のようなものを使用して泊まっているらしい2人連れの女性も食事を終えて引き上げながら
「すごくぬるいわ」と。

それを聞いてSさんが「そうか、ぬるいか」

懐中電灯片手に外に出ていく気配、5分ほどで帰ってきて、私に向かって
「XXさん、これで大丈夫だと思う。もうぬるくないと思うよ」

何をしたのかな?

食後に内湯に入ると、落ちるお湯の量が大幅に増えて温度が上がっていた。
あ~ いいかも!  しかし、かすかな違和感が。なんだろ。

露天に出て、びっくりした。
ブオーーーーン とモーター音が響き、 ジャカジャカジャカ と 女性用の入り口に激しい水音が…
低いモーターの通底音が湯音に負けないくらい響いていたのであった。

這這の体で内湯に戻る。

ええー! さっきの違和感の正体が分かった。
内湯にも微かではあるが、その機械音が感じられるのだった。

私は茫然、愕然とした………






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お湯から上がって、管理人さんとしばらくお話しした。

こんないい自然の中の素晴らしいお風呂だったのに… あのモーター音がぶち壊しにしちゃってる、と。

「そうか… 会社の上に言ってみるよ。この春に付けたんだよ。誰も文句言わないけどな。音の出ないモーターもあるんだけど」

たぶん男湯の内湯にはダイレクトに源泉からパイプで引けるのだろうが、
女湯の内湯はちょっと距離があり、源泉からお湯を引くと水位の関係で思うように投入できず入れる湯量が減ってしまい、その結果ぬるいお湯がもっとぬるくなってしまうのでたぶん苦情も多く、この春からポンプで女湯の内湯にお湯を送るようにしたのだそうな。

けれど……
お湯の温度と引き換えに、なんとかけがえのないものを失ってしまったことか。

初日は気温が高かったので、Sさんはモーターのスイッチを入れなかったのかあるいは忘れたのか、
その結果音がしなかったのだった。

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朝、お風呂に行く前にSさんに
「あのモーターのスイッチ、初日のように切ってもらうわけにはいかない?」と聞いてみた。
ちょっと考えて
「もう1組の客が、ぬるいぬるいって言うんだよ。だから、すまないけどあのままで…」

そうだよね、そうだよね、私だけの風呂じゃないもの。





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激しく落とされるお湯は、ポンプの内圧を調整するためらしい。

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男女の入り口の目隠しの塀の下に、それはある。

ここは私のお気に入りの場所で、この塀に寄りかかり、
平べったい石に腰かけて、正面から押し寄せるお湯を感じながら
いつまでも座っていられるところだった。

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なにも変わっていなかった。

溢れ、流れ、寄せてくる透明なお湯の豊富な量も、心地よさも、

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大きく巻きあがった湯気の向こうに、一瞬垣間見える山の家の姿も、

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お湯に浸っている私も、

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美しく澄んだ湯面に映る青空も、


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なにもなにも変わっていなかった。

ただ、勢いよく落ちる湯音に、モーター音が加わっただけであった。



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          私は    慟哭した。





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もはや、かつての姿ではないのだ。  どれほど貴重なのものを失ってしまったことか…
そして多分、もう二度と戻ることはないのだ。

あまりの喪失感に、涙がとどまることがなかった。
だれもいなかったから、私はあられもなく泣いた。


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「さようなら」 なんだろうか…





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来たときのままの風景だった。





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こんな上からでも、お湯の透明感が感じられる。







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岩の間から、あんなに豊かに流れ出している。

また、自分の目に涙が溢れてくるのが分かった。









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管理人さんは
「また来てください」と、玄関先に立っていつまでも見送ってくれた。

クアプラザピリカからは、おとといとは違うスーツ姿の男性が迎えに来てくれた。

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「ピリカダム、見たことありますか? まあ単なるダム何ですが」と言って、
わざわざ車を回して観光してくれた。


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クアプラザでバスを待つ間も、みんな「なにもないところですが、ぜひまた来てださい」と言ってくれた。





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本日は飛行機で帰る前に、大沼でもう1度カヌーに乗るのである。
函館本線に揺られながら、私はときどき涙を流した。

大沼公園で下りて、しばらくしてからクアプラザで買ったお土産を電車の中に忘れてきたことに気付いた。

悲しみのあまりか、ボケの始まりかはわからない。





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時間が来るまで大沼を少し歩き、ちょっとおなかがすいたので、
ただ1軒だけあるレストランに入った。<タブル・ド・リバージュ>ですって。

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観光客相手のレストラン。


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この辺<プレート料理>が流行っているみたいね。

メニューの写真を見るとランチプレートなるものは1,800円くらいで皿に色々載っているものだったが
ドカッと食べたいわけではないので<チキン載せサラダプレート>みたいなものを頼む。

うわ~ 葉ものてんこ盛り!  なにこれ?  鶏、少ない。

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そして!驚くべきことに中から湿ったパンの断片が現れた。
うーーー …

これ、1,200円って高くない?

オーナーは養鶏場の経営もしてるのかしらね。
スタイリッシュな鳥の餌、という趣きよ。
(焼き鳥みたいなのが上に載っているので、まさか鳥は食べないだろうけど)

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葉もの、皿いっぱいは食べられんわ。半分残す。
気分転換に、デザートは外で。


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パンプキンチーズケーキはおいしかったわよ。カリカリしたカラメルのチップも香ばしくて。





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もの思いに沈みながら、ハッ!

カヌーの時間だわ!





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本日強風。

オーナー兼ガイドさんが「しばらく様子をみましょう」

やがて「行きますか!」 で、併走してもらって今回も1人でパドリング。
強風、高波で流されまくり。波をかぶって水が入ったりする。
別に恐怖感はなかったが、万が一飛行機の時間に遅れるようなことになると…
と、迷惑をかけてしまわないか心配だったが。

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途中、小島に上陸。
「今日は体格のいい男性でも大変な状態でしたよ、よく頑張りました」と言ってもらったけど
始めに大変だということを教えてくれたらね、さっさと中止したのにぃ。

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だけどどんなときに横転するのか想像ができ、荒れた状態の感覚がつかめて、これもまたいい経験だった。

カヌーに乗っているときは、山の家のことを忘れていた。
それどころじゃなかったから。





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気が付くと、いまでも喪失感を思い出して目頭が熱くなる。

カメムシだらけでもいい。蛇の抜け殻をつかんでもいい。同じ食事でもいい。
だけどあの自然の宝物のような露天に響くモーター音だけは…

耐えられる日がくるだろうか…



もしかすると年のせいで耳が遠くなり、あの音も全然気にならなくなる日がるかもしれない。
あるいはまたモーター音なんてへっちゃらよ~!とこだわらずに言える日がくるかもしれない。

再びあのお湯に浸かれる、幸せな時間が持てることを、いまはひたすら…




ひたすら祈っている。














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