(2009年10月30・31日 1人泊 @5,575円)
9時新宿発の羽田行きリムジンバスを予約したのである。
7時半に目覚ましが鳴り、止めたあとちょっと目を閉じたようで、そしてもう一度見たときになぜか8時半??
えっ? なぜに8時半??
そういうときには、体は頭とは別の動きをするようである……
虫の知らせか、昨晩完璧な荷造りをしていたのだ。
10分後には家を出ていて、山手線新宿駅におり立ったのは9時ジャストだった。
どこかでスイッチが入り、頭の中はアドレナリン噴出、通常の200%の活性化がおきるんだろうか……
(バスが遅れずに来て乗車が少なかったら9時に出てしまうけれど、今日は行楽シーズンの金曜日。
荷物の多い客の集団でもいれば、バスのサイドを開けて荷物入れに手間取り、出発は遅れる可能性がある。走れば間に合うか…… いや、次のバスでも羽田空港で走ればなんとかなるはず、歩いて行こうか…)
一瞬の判断で走ることに決めた。
みっともなくない程度に(だってさ、コケたら元も子もないもの)小走りでバス停へ走る!
バスは… 私を待つかのようにエンジンをかけて停まっていた。
係りのお兄さんに名前を告げてお金を払い、座席に着くとドアが閉まり、そしてバスはおもむろに出発したのであった。
9時6分過ぎ。
函館空港からタクシーで函館駅に向かう。
緑の窓口に年寄りの集団が行列していないことを祈りつつ。
そして長万部までの特急はスムーズに買えて、なおかつカニ弁当まで買えるゆとりがあったの~
長万部からクアプラザピリカまで行くバスは1時間ほどあとである。
長万部の海に。
体は確かに強い風に吹かれながら長万部の海を眺めているのだが、頭はまだ東京にあるような感じで、なんだかここにいる自分がちょっとウソっぽくて、起きてから今までの時間を反芻してみたりするのだった。
駅まで戻りトイレに入って鏡を見て
「いや~! すっぴん!!」 と、そのとき気づいた。顔は洗ったような気がするが。
でも周りは知ってる人いないからいいわね。まあ、たとえいたって気にしないけど。
つつがなく定刻に来たバスに乗り、30分ほどで<クアプラザピリカ前>に到着。
前回も車で送ってくれた宿の男性がクアプラザのロビーで待っていてくれて、ニコニコしながら<山の家>まで運転してくれた。
気がつけば前回と同じ部屋で、素早くお布団など敷き込み、お茶なぞ飲んでいるのであった。
信じられな~い!
いまごろになって、この時間に無事到着できたのが奇跡のように思えてきた。
そして本日宿泊は私1人なんですって!!
おお~ 1人占めの露天に。日帰り入浴の人も来ていない。
いろいろありすぎて、お湯につかった瞬間はそうでもなかったのだが……
暫くすると歓喜が体中を駆け巡った。
宿が閉まる直前に、こんな贅沢なお風呂に入れるのである。
ぬるめのお湯にひたりながら、しみじみと周りを見回して、こんな清逸な空間が存在することもまた奇跡のように思えた。
紅葉は終わりに近づいている。しかしかなたの山にはその名残が見られた。
このあたりの山々は、燃えるような美しい錦秋の彩りだったことだろう。
来年はそれを目指そう。
そして…… 湯口よ!湯口!!
あそこよ、あそこ! あそこ!
あせって小石に足を取られそうになる。なにあせってんだ?
本日だれもいないのに。
はやる気持ちを抑え、転ばないようにゆっくりと。
あーーー 感動である。
奥の奥、あの岩の下からから滔々と湧き出している……
お湯の量、その圧倒的な力をまざまざと感じ……
幸せであった……
カメラを水中に入れると、無数の気泡が踊っていた……
その流れ落ちる音を聞きながら、1段高くなっている部分に這い上がり、押し寄せるお湯に身を任せる。
温かなしぶきが体を包んだ。
また下に滑り降りて、流れていくお湯に身を任せる。
こんなことがあっていいのだろうか……
前回できなかったこと、それがいまこんなふうにできる……
感無量。
嬉しくて何時間でもいられる。
お湯の成分はあまり濃くない。しかし肌への負担もなく、柔らかく、なによりたいへん優しい感じがあるのだ。
内湯の、落ち着ける雰囲気と造作は、独特のものがある。
湯口の下の岩に腰かけてたゆたっていると、お湯から上がるのが嫌になっしまって、
特に夜入ると、お湯に揺られながら寝てしまおうかと本気で思うのである。
あちこちの温泉の寝湯もいろいろあってたぶん成分の比重と関係するのだろうが、体が浮いてしまうお湯もあり、そういうタイプのお湯は湯枕があっても安定しないことがあるが、ここのお湯は成分があまり濃くないことが幸いしてか適度に体が沈み、ちょうどいい状態でお湯の中にとどまっているのだ。
だから私は本気でこのお湯の中で寝てみたいと思うのである。
しかしいろいろな意味で冒険は避けたほうがいいわけで、宿に迷惑な事態が起こってはならず、
やっぱり分別を持たないと…… と、泣く泣く諦めた。
かなり冷えてきて、食事処のストーブをつけてくれた。電気は自家発電だそうである。
あら? お弁当スタイルになっている!
中身は前回と同じ。
大きなおいしいヤマメの唐揚げ。
すぐにお燗してくれる。
「ジンギスカンは半分でいいです」と言っておいたんだけど、 えーっ これが半分?!
お肉は半分以上残っちゃいました……
月を見ながらの……
素敵な時間でした。
朝は7時に起きて入ります。こういうときはちゃんと起きる。寝坊はしない。
冷たい朝の空気の中で、湯気が立ちのぼる。
おはよう!おはよう!
車で山の中の野湯に入りに行ける人たちもいるだろう。
自然の中でキャンプしながら、岩の割れ目から湧き出るお湯を満喫する人もいるだろう。
車という手段を持たない私にとって、
この宿は、温泉の原点であり、そして極致、である。
そんなお湯と宿に出逢えたことは、ほんとうに喜びであった。
本日は前回この宿でお友達になった、Yおじさんも来るのである。
温泉好きの私たちは意気投合しお互いこの宿がとても気に入り、その後Yさんに電話してこの宿が閉まる直前に行くことを伝えたら、Yさんも来ることにしたのだ。
枯葉がたくさん浮いているので、網を見つけてお掃除開始。 こ、これはもしや…
あ”ーーー!!! やっぱり長いものの抜けガラだーーー!! 温泉に浸かってるからリアルだよーーー!!
2時間後、風呂は湯面にも底にも枯葉1枚残さず、パーフエクトにお掃除完了。
いい汗かいたのち、朝ご飯。
ここのお風呂のファンがいるのだろう、本日土曜でそして今年最後の日である。
車で日帰り入浴客がチラホラとやって来る。
風呂のお掃除しておきましたからね~ ゆっくり入っていってください。
いいお風呂ですよね~ 私はその間、散歩してきま~す。
急激に冷え込んできた。そのピーンとした寒さが、懐かしく心地よく感じた。
車でやってきたYさんと再会。
温泉好きは、会うのは2度目でもなぜか旧知のように自然にふるまえる。不思議ね。
さっそく温泉情報交換。
Yさんが入っている露天風呂に、私は川古温泉でゲットした湯浴み着着込んで入っていったらちょっとビックリされたけど、子ども連れの日帰りのお父さんも入ってきてみんなでおしゃべり。
子連れのお父さんが去ってしまってから2時間余り、Yさんと2人で、お話ししながらいいお湯につかっていました。
うかがえばYさんも山あり谷ありの人生、しかしいまでは娘と息子も独立、可愛い孫もいて北海道の自然に触れながら、怪我のリハビリも兼ねて気ままに車で温泉めぐり。そしてぬる湯好き。
還暦前後ともなれば、みんなそれぞれ辛いことも絶望することもあったよね。
それをなんとか乗り切って、そしていまは温かなお湯に包まれ揺られて……
人生のたそがれ時の、静かで満ち足りた時間。
Yさんは
「2時間以上も風呂にいたなんて、生まれて初めてだよ」と、笑いながら上がっていった。
あ、今日は鍋ですね。ちょっと豪華です。最終日のせいかな?
嵐が大きければ大きいほど、去っていったあとの静けさと穏やかさが際立つ。
絶望が深ければ深いほど、浮かび上がって見た空の青さが胸にしみる。
それがどれほど貴重でありがたいものであるかは、経験したものでなければわからない、
ということを
私たち2人は知っているようである。
だから
その穏やかな時間をとても大切に過ごしたいのだ。
私は部屋の窓から、しばらく露天を見下ろしていた。
冬の間中、あのお湯は流れ続けているのだ。いとおしいような、もったいないような。
雪の中をできればそっと歩いてきて、そのお湯を眺めてみたいと思う。
春になったら、また来ます。また会いましょうね、御縁があれば。
本日私は、山を越えた向こう側にある二股らぢうむ温泉を予約してある。
チェックインには時間があるので、これからYさんお薦めの温泉、濁川温泉 新栄館に連れて行ってもらうのである。
ここは熱いお湯らしいが昔からの造りのいい湯船があって、私が行ってみたかった温泉なのだ。
わ~お!! 不便なところにあって、行きにくそうな温泉に思いがけず行けることになった!
欣喜雀躍なの~~!
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