岩手 松川温泉 松楓荘

(2012年1月13・14日 1人泊  @8,550円 )








岩手 松川温泉 松楓荘


何もしないで過ごすことは、消極的にではあるが現状を肯定するように思える。


かといって、いまだ復興の見通しも立っておらず津波の爪痕が生々しく残った沿岸部に出かけていき、
その風景の前にたたずむことは、私にはとてもできない。

去年の暮れにテレビで放映された映像の数々は、いまだに私をショック状態に陥れる。



岩手 松川温泉 松楓荘





いまの私にできることは、
大きな被害だけでなくその後の風評も含めて観光客が激減してしまった被災地、
岩手、宮城、福島の温泉に行って、僅かでもその地の観光収入の一助になればということくらいか。




岩手 松川温泉 松楓荘





もっとも<私>が2泊したところで微々たるものである。

しかしそんなふうに考える<私>がたくさんいれば、
そんな<私たち>がたびたび宿泊すれば
塵も積もれば、で少しは力になれるのではないだろうか。



岩手 松川温泉 松楓荘



盛岡駅は賑わっていた。
日常が戻っているのは嬉しいことだ。

東京は雪がちらついていたのだが、
福島、仙台、盛岡に雪は積もっておらず、
盛岡駅でバスを待つ私の前にいる高校生たちは学生服の上にコートも羽織っていない。






岩手 松川温泉 松楓荘





松川温泉には、冬の間だけ小型のボンネットバスに乗り変えて行くらしい。

5~6人ほどの乗客を乗せ換え、年期の入ったバスは暖房がものすごく効いていて
チェーンの音をガリガリと響かせて山道を登る。




岩手 松川温泉 松楓荘





松楓荘の前で私ともう1人降り、次の宿に走り去っていった。






岩手 松川温泉 松楓荘

曇っていて、風のない穏やかな、午後も3時半をすぎればもう夕暮れの気配。



岩手 松川温泉 松楓荘

ゆるい坂を、滑らないように気をつけて慎重に歩いていく。





岩手 松川温泉 松楓荘

源泉60℃以上のお湯は、最近は避けるようになった。

私には負担が大きいお湯である。





岩手 松川温泉 松楓荘

東北の温泉地は数あれど、源泉の温度が高いところが多い。
温度で選んでいたら、私にはほとんど行けないところだらけである。

けれど冬のこの寒さの時季ならなんとかなるであろう。とりわけ露天は。
そんな思いで選んだ松楓荘。

廊下の床部分と天井に近い部分にお湯が流されていて、館内は暖かだった。
お湯の流れる音がする。






     岩手 松川温泉 松楓荘  岩手 松川温泉 松楓荘


電話で予約したときに女将さんに、宿泊料金が2種類あって食事の品数が違うと言われ、
食事は少ないほうでいいです、では安いほうで。

部屋に入ってびっくり~ 
寒さ対策でビニールシート2重のはめ殺し、おそと見えませ~ん!



岩手 松川温泉 松楓荘




これは料金の高い2階の部屋に変えて貰おうか、とも思ったが、おそらく2階の部屋の窓もビニール巻き。
圧迫感は変わらずではないだろうか。

まあ、ここでいっか。








     岩手 松川温泉 松楓荘  岩手 松川温泉 松楓荘

部屋の窓の下にもお湯のパイプが通っていてたいへん暖か。
このカバーを巻き上げたり降ろしたりして部屋の温度調節をするんですって。

菓子ではなく温泉卵があった。





岩手 松川温泉 松楓荘

トイレも暖房されていて、かつシャワートイレも1カ所ある。快適。











岩手 松川温泉 松楓荘

さてね、混浴の洞窟風呂は、午後5時から7時まで女性専用になるんだそうな。

着いてすぐに内湯に入ろうもんならこっちに入れなくなるのは目に見えていたので
5時まで部屋で持参のコーヒーを飲んでゆっくり寛ぎ、5時5分前に出発!

いざー!



岩手 松川温泉 松楓荘

たくさん置かれてある長靴を履き、
吊橋を渡って対岸にある洞窟風呂に。

雪がほんの少し降っている。空気は冷たいがそれほど冷え込んではいない。



岩手 松川温泉 松楓荘

こんなところで滑って転んだらみっともないので、ゆっくりと。







岩手 松川温泉 松楓荘




岩手 松川温泉 松楓荘







寒いから素早く脱いでかけ湯して、急いでお湯の中に。






岩手 松川温泉 松楓荘

温度ぬるめでちょうどいい。
本日女性客は2人だそうで、もう1人の人は来ず、独り占め。



岩手 松川温泉 松楓荘

お湯の酸性度は強くなく酸味もほのかで、pH5~6くらいか。
わりとまろやかな肌になじむお湯であった。

時々湯口からボコボコと音がして流れてくる湯量も多く、寒いので適温になり、気持ちよい。







岩手 松川温泉 松楓荘

次第に暮れてゆく空の色を眺めながら、雪の冷たさを時々顔に感じながら、
しかしどう頑張っても15分も入れば充分であった。




岩手 松川温泉 松楓荘

ほっかほかになって上がる。

ところどころにともされた蝋燭の光。




岩手 松川温泉 松楓荘

闇を照らす明かりの温かなゆらぎ。

供養のともし火のようであった。







岩手 松川温泉 松楓荘


岩手 松川温泉 松楓荘

シャムのミックスの<猫>。
名前はなく、<ねこ> <にゃんこ> <ねこちゃん> などと呼ばれている。
ノラだったのが宿のそばをウロウロしだしご飯を貰っているうちに中に住みつくようになったんだそうな。

女将さんによるとお客さんが高い鰹のレトルトなんぞ持ってきたりするので、
いまではとんでもなく贅沢猫となったらしい。

私が宿の玄関に着いたときに、ギャオーギャオー ギャーーー ギャオー
と、南国の喧しい鳥のようにこの猫がないていた。

この宿にガールフレンドがいないことが不満のようである。







岩手 松川温泉 松楓荘

夕食は食堂で。



岩手 松川温泉 松楓荘





安い料金なのに、いろいろ手をかけたものがまず目につき、
あら~! 嬉しい!




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小さな蓋物の蓋をとると、これは鱒の卵かな?
小粒でキラキラしている。




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さくら鱒のお刺身。
身がしっかりと、充実感がある。



岩手 松川温泉 松楓荘

お定まりの岩魚であるが、内臓を抜き、食べやすくしてあった。



岩手 松川温泉 松楓荘

すき焼き風の鍋は豚肉であったけれど、このお肉の脂は甘味があってとてもおいしい。



岩手 松川温泉 松楓荘

ご飯に鱒の卵載せしてみました。
プツプツが噛みごたえあり。



岩手 松川温泉 松楓荘

熱々のお椀があとで運ばれてきて、このお椀の中にはたくさんの野菜類と里芋のような丸いものがあって、
これは小麦粉のお団子だった。
食べるともちっとした中に小さなナッツのよう食感のものがあり、そしてかすかに甘味も感じ、初めて食べるものだった。

お給仕してくれたおばさんに尋ねると
「二戸の郷土料理の<まめぶ>というものを作ってみたんです。小麦粉のおだんごの中にクルミと黒砂糖をちょっと入れて丸めたものです」

たいへん手間暇のかかるおいしい汁だった。
あとで調べてみたら、二戸ではなくて久慈の郷土料理だそうで、多分ハレの日のお料理なんだろう。

子供と母親、あるいは嫁と姑、おばあちゃんと孫、あるいはそのすべての人たちが、笑顔で小麦粉を丸めている姿が目に浮かぶ……

仕事から帰ったお父さんが台所をのぞいて
「お! 今日はまめぶか?!」と頬が緩むんじゃないかな。

穏やかな、なごやかな関係と時間で成り立つ郷土料理。
いま再び、久慈のすべての家庭でそんな情景がありますよう。









岩手 松川温泉 松楓荘

にゃんこは寝るときと食べるとき以外は
怪獣のようにないている。



岩手 松川温泉 松楓荘

この温泉の成分は卵のカラを通過するらしく、温泉卵は珍しいベージュ色だった。











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混浴の露天。
タオル巻き禁止なので人気のない時を見計らって。

昨夜内湯に入ったらちょー熱くて、しばらく水を入れてうめても入るのが困難だった。
やっぱり熱いお湯のところは露天じゃないとダメかもね。



岩手 松川温泉 松楓荘







岩手 松川温泉 松楓荘





       

岩手 松川温泉 松楓荘

      

       

岩手 松川温泉 松楓荘

なかなかいいんだけど、いつ男の人が入ってくるか分からないので落ち着かないのであった。







岩手 松川温泉 松楓荘

朝ご飯。

どうってことないのだが、どれもおいしい。

岩手の宿のご飯は、どこもおいしいという印象がある。









岩手 松川温泉 松楓荘







岩手 松川温泉 松楓荘




岩手 松川温泉 松楓荘







2階の洗面台前のビニール巻きでない窓ガラス。
雪景色がよく見える。

こうでなくっちゃね~






岩手 松川温泉 松楓荘




岩手 松川温泉 松楓荘

小動物の足跡がたくさんある。

ぼーっと玄関から外を眺めていたら、黄色いふかふかの尻尾を持った白い顔の動物が車の間を駆け回っていた。

宿の人に「テンですか?」と聞いたら
「あ? 来ている? キテンやキツネがよく来るんだよ」とのことだった。







岩手 松川温泉 松楓荘

朝10時から12時の時間帯も洞窟風呂の女性専用時間である。



岩手 松川温泉 松楓荘

今のところ湯治のおばさんと私だけなので、また独り占め。



岩手 松川温泉 松楓荘

今日は雪がハラハラと舞う。







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お湯はとっても景気良く、 ボコッ ボコボコッ っと出てくる。



岩手 松川温泉 松楓荘

細かいグレーの湯の花が堆積している。



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かき回すとあっという間に濁り湯になる。



岩手 松川温泉 松楓荘

気持ちいい。



岩手 松川温泉 松楓荘

しかし15分が限界。

汗がわっと出て、そしてあっという間に引いていく。









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散歩。





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雪の結晶。



岩手 松川温泉 松楓荘

綺麗だけど、小さくて、形が不完全。

北海道のあの素晴らしく大きく輝く雪の結晶が、ちょっと懐かしい。




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寝ているときは静かだ。











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2日目の夕食。



岩手 松川温泉 松楓荘





献立が全部変わっている。




岩手 松川温泉 松楓荘





とても丁寧に作ってくれている。




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それが押しつけがましくなく伝わってくる。



岩手 松川温泉 松楓荘





滋養が体にしみわたる。




岩手 松川温泉 松楓荘





県によって、食事の印象が違うのは、興味深いことだ。




岩手 松川温泉 松楓荘

食べることに対する意識の違いなのだろうか。









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今日は土曜だったので、日帰り入浴の人たちが大勢来ていた。

入れ替わり立ち替わり、食堂も大勢の人がいて、家族ぐるみでごろんと横になっていたり。
近隣から大勢の人がやってくるようになっているのだ。
ちょっと落ち着かなかったけれど、安心したのであった。

内湯も大勢の人が入り、だからお湯は適度に水でうすめられ適温となっていた。





岩手 松川温泉 松楓荘

人気がなく湯気がもうもうと籠った内湯はむしろぬるめで、
落ち着いて入ることができた。





岩手 松川温泉 松楓荘

ぼんやり霞んだ明かりの中で、しばしゆらいだ。











岩手 松川温泉 松楓荘

星が見えるかと思って外に出てみたが、細雪が降っていて星は見えなかった。

にゃんこが大声でなきながら宿の廊下を隅から隅まで歩いていた。
朝になるとなきすぎて声が枯れているんだって。

嫁さんを連れてきてあげればいいのにね~









岩手 松川温泉 松楓荘







たくさんは食べられないが、朝ご飯おいしい。

幸せな気持ちになる。










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あのバスは、いったいいつまで走れるんだろうか。











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岩手県……

まだまだたいへんでしょうけど、

どうか頑張って復興してください。













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