(2009年8月5・6日 1人泊 @10,950円)
福島駅で奥羽本線に乗り換え。
山形新幹線「つばさ」に乗ると、通り過ぎてしまう駅、
峠駅で降りる。
駅舎は完全に覆われている。不思議な眺めだ。
「つばさ」に乗って車窓から眺めていて、そのうち降りることになるだろうな、と思っていた。
かつてはこの峠駅も含め4駅がスイッチバック駅であったのが、
山形新幹線が作られたのを機に廃止されたのだ。
列車の時間に合わせて、宿の送迎がある。
本数が少ないので、帰りは8時台の電車の次は、午後1時台の電車になるが、
それに合わせて12時50分のチェックアウト延長(遅立ち料、とあった)も、950円という料金であった。
本日は私のほかにもう1人男性が。
でも宿に着いても中に入らなかったから、宿泊客ではなかったのかも。
車は駅を出ると急な坂を登り、その後はなだらかな登りがつづく。
宿まで4km、歩くと1時間、と駅の地図には書かれていたが…
もっとかかりそう。帰りは下りなので、歩いてみようかな、と思った。
くもり空のもと、細い道をどんどん進む。
よく茂った緑が濃くなり、空気がぐっと締まってくるのを感じる。
景色を見つめる私の脳内に、どっとアドレナリンが分泌されたらしく
歓喜の感情に満ちる。
15分ほどで宿に到着。
横に長く連なる湯治宿の典型的な建物。
使い込まれた廊下はすがすがしく、長く続き
そして静かである。
突き当たりは混浴の内湯。
ワクワク~
1階、6畳、川に面したお部屋。
川音は激しいが、アルミサッシの窓の内側にもう1枚ガラス戸があり、2重に閉めると静かであった。
部屋の斜め前に水洗のトイレ、部屋のすぐ前に洗面所。
このスタイルと6畳ひと間が、私にとってはいちばん落ち着くのね。
テレビはちゃんとつく。
ローカルの宮城放送が入って、話題は仙台の七夕祭り。
ぐずついたお天気で、雨の心配をしていた。
浴衣、バスタオルあり。
本日あまり人がいないようなので、混浴の内湯に行ってみよ~う!
入口は別だが…
うわ~ あふれてる!
そしてだれもいないから、早く入らなくちゃ!
ああ… 久しぶりにほんわかとした硫黄の香りをかいだ…
お湯はけっこう熱い。 キュッとなった肌が、しばらく入っているとほぐれていくのを感じる。
その心地よさ…
おじさんが入ってきたら分かるから、右の戸口にダッシュしてガラス戸を閉めればいいの。
う~~~ 気持ちいい~~~
肌への負担はなく、ほぼ中性、ややアルカリ? そしてほどよい玉子臭。
白い湯の花がふわふわと。口に含むと飲みやすい、甘みを感じるお湯だった。
しかし長時間は入れず。
初めてのお湯は、ご挨拶程度にしておかないとね。
切り上げて、出る。 汗がなかなか引かない。
すぐそばの女湯ものぞいてみる。
だれもいない。
あらっ! こっちもなかなかいいじゃないですか!
ちょっと入りたくなってしまいましたが、いくらなんでもこの汗では… 我慢。
館内の明かりを反射する木の廊下を含めて、この湯治宿の風情はお掃除が行き届き、なんともほっと落ち着けるのだ。
お風呂は混浴の露天が2カ所、混浴の内湯が1カ所、女湯の内湯が1カ所。
しかし2カ所の露天は女性タイムと貸し切りタイムが多くとられ、月・水・金、火・木・土で時間帯を違えていて、日曜はさらに違う時間割にし、その合間、順番にお掃除の時間を入れているので、女性でもたいへん入りやすいことが分かった。
混浴の岩の露天のお掃除タイムにのぞきに行ってみた。
川沿いにちょっと歩く。
いまお湯が抜かれつつあるところ。
ゴロゴロの岩で、川の流れは見えない。
かなり鉄分が多いようで、岩は赤茶けている。
宿の方に伺ったら、この川の水の味は酸っぱく、魚はすめないという。
大小さまざまなトンボがとてもたくさん飛んでいる。
まだ8月初めだというのに、ちょっと赤くなっているのもいた。
東北はまだ梅雨明けしていない…
農作物はどうなるのだろう?
このまま、秋か。
混浴の木造りの露天は、2年ほど前に造ったとのこと。
朝は、空いていれば勝手に鍵をかけて貸し切りに。
夕方5時半からは、50分500円で貸し切りに。
着いてすぐに5時半からを予約。
う~ん!贅沢!
でも熱いので、時々縁に腰かけて涼みながら、まったり~ん。
6時はまだ明るい。
頭の上に何か落ちてきたので手で触ったら、トンボがとまっていて驚いた。
トンボも驚いたらしく、シャシャシャッという羽音であわてて飛んでいった。
上がって、振り返ると
ああ… あんなに湯気が……
夕食は部屋にお膳で持ってきてくれる。
6時からだが、5時半から貸切露天に入ると言ったら
「では6時半に? もっと遅いほうがいいですか?」
と聞いてくれて、フレキシブルに対応してくれるみたい。
お品書き付き。
鯉の洗い。
酢味噌ではなく、お醤油とワサビ。
まあね… 鯉の味です…
鯉甘煮。
これが、冷蔵庫から出したてのようでひんやりとしていた。
鯉の… 甘煮の味です…
身がかなり硬く(冷えていたせいもあり)、そして甘く、しかし内臓は苦くなくて食べやすいが、とりたてておいしいものではない。
つまり、なんというか…
えーっとね…
料理の感覚、というか、それがない人の料理なのね。
こう、すべてにひと味付け足さないとちょっと食べられない、みたいな。
岩魚の味は岩魚でしたけどね。
酢の物にはお醤油をたらさないとだめだったし、
これは何と言いましょうかね~
一生懸命作っても、ダメな人っているんですよ。
それは別に都会とか田舎とかには関係なく、そして料理を学んだとかそんなことも関係なく、
味に対する感覚、出来上ったものに対する想像力があるかないか、ということなんでしょうね。
だから、料理だけじゃなく、料理以前の、ご飯のお米の味とか、漬物の味、全般にわたるんです。
料理はもういいや~ そしてご飯もちょっとね、漬物もこれじゃね、みそ汁も…
ってな具合に。
で、ちょっと寂しかったです。
でもそのあと、大宮で買ってきた<いも恋>
(分厚いさつまいもの輪切りに小豆の粒あんをのせて小麦粉で包んでふかしたお菓子。熊本に<いきなり団子>という似たようなものがあるが、私は断然川越に軍配をあげるのだ)
をデザートに食べたので満足!
朝もお部屋で8時から。
昨日の鯉の残りを揚げて南蛮漬けにしたようなものは、さすがにくさみがあって、ガクッとしました。
というわけで食べるものないな…
ご飯の味が、ちょっとわびしさをそそる。
しかし、それから大宮で買ってきたピエールのデニッシュを食べ持参のコーヒーを飲みましたの。
バターたっぷり、バリバリいけてた。
水がおいしいのでコーヒーもおいし~い!!
満足ののち、女湯に。誰もいない。
幸せな気持ち。
散歩です。 タオルを干してあるのが私の泊まっている部屋。
車がどんどん来て、日帰りの人がたくさん。
ウイークデーなのに。
宿の前を通って登山者が通る。
混浴の内湯のすぐそばを通っていく。
吊橋のたもとに木の露天が。
目隠しがいまいち風情がなし。
ほんのちょっと工夫すれば、お金をかけなくてもいい感じになると思うんですけどね。
あんまりそういうことは気にしないみたいね。
エコな宿なのです。
外の道を下ってみる。
車だとあまり感じないが、なだらかにずっと下っている。
帰りはなだらかだけどずっと登る、ということ。気をつけよう。
滑川橋、という橋。
なるほど。 滑川の意味が分かった。
厚い岩盤の上を水が流れ落ちて、壮観であった。
さてひと汗かいたのを、さっと流すか。
本日、混浴内湯はなんだかとても人が多い。
露天のほうもゾロゾロ歩いていたりする。
お掃除が済み、お湯を入れ替えた女湯。
フレッシュな、酸化していないお湯は、透明。湯の花は舞っていない。
こちらにもこのあと日帰り入浴の人が何人か入ってきて落ち着かなかった。
そして私は貸し切りの露天に。
これが500円。嬉しい!
特大のトンボを観察していると、すぐに汗だくとなり…
縁に腰かけても汗は引かない。
そして私は!
例の如く、いいもの発見!
誰にでもお勧めできることじゃありませんが。
しかしアツアツになった体を冷水で一気に冷やし、あたたか~いお風呂へ。
また一気に冷やしお風呂へ、を繰り返すと、全身のコリは解消しますね~~~
私の場合、風呂の脇に冷水の桶があるのが理想。
しかし代用品でもいいことがわかり、今後はこの形態かな。
これをやるとね、湯あがりの気分もすっごくいいんです。
あら、本日は海のものですね。
この身欠きニシン、硬いですう。
寒天とジュンサイの酢の物は、味がしないのでお醤油足しました。
この山菜は、巨大な煎餅みたいでバリバリですね。
手で割らないと、天つゆの小鉢に入りません。
カレイの煮付けもほとんど味がしませーん。
ま、いいや。またデザートに<いも恋>を食べてお茶を飲んで満足!
グルメな人がおいしい料理を作るとは限らない。
感想やうん蓄をいろいろ語ってくれて、しかし作ってくれたものを食べたとき、あのうん蓄はなんだったのじゃ!みたいなことがある。
逆に「あたしの料理なぞ、料理のうちに入らんで」と言って出してくれた田舎のおばあちゃんの料理が、
どれを食べてもすべて塩梅良く、素材の味が生きていて心からおいしいと思ったりする。
こればっかりはもう、ね。 感覚、ですね。どういう意識があるかってことなんでしょう。
本日、例の1000円ETCのために、昨日の倍以上の部屋が埋まったそうである。
どおりで車で来る日帰入浴が多かったのだ。
しかし8時ともなれば、たいへん静かな館内。
朝食。
焼いたマスと卵で、昨日よりよろし。
しかしご飯がな~
持参のアンリ・シャルパンティエのマドレーヌとコーヒーで満足。
その後たいへん深い霧で包まれた。
あちちっ ……
しかし霧に包まれた風呂からの風景は、幻想的で見入ってしまう。
あ~ ひと仕事終わったってこともあり、すごくほっとして、そしていいお湯で、
体調がガタガタに崩れていたのも持ち直したのだった。
なんか、いい感じだった。
また来るかも。食糧持って。
帰りの車に乗り込むと、人数が1人足りないから、と運転する宿の人がフロントに聞きにいった。
すぐ帰ってきて
「雨だから帰るのやめたそうで」と笑いながら運転席に着いた。
そういえば私が支払いをしていると、パジャマ姿のおばあちゃんがフロントにやってきて
「雨が降っているから、送りの車には乗らない」と言っていたが、あの人か!
「34日か?いや37日かな、居続けてるのがいるよ。あともう1人10日以上の人が。
なんだろな~ 居心地いいんだべ」と笑っていた。
湯治食にしてもらって長逗留すれば安い料金ですむし、老人が自宅でポツンといるより
客同士お話しもでき、宿の人も相手にしてあげるから、きっと居心地いいんでしょうね。
私も居続け、やってみた~い!!
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