(2011年5月30日 2人泊 @10,650円)
カヌーのあと、1時半に頼んでおいた鹿追ハイヤーが来てくれて、これから夏の間だけ通れる然別湖畔の道を通り糠平温泉へと向かう。
もちろん鹿追町からかなりあるので、ここに来てもらうための料金がかかるが、
ほかに交通手段はないし、2人で9,000円弱なら「まっ いいか!」である。
なんでも運転手さんによると
「鳴きウサギを見るために、本州から4回も然別に通っている人がいるんですよ」
気の毒に4回通っても見られないらしい。
「鳴き声なんかしょっちゅう聞くし、日に何度も見てる人もいるんだけどねえ…
その人『こうなったら鳴きウサギ、見られるまで通う!』って言ってましたね、もはや意地だね」
うーん… それはね~ ちょっとね~
何が何でも見てやる!ってなったら、鳴きウサギだって
「あっ! 今日は寝ぐせでヒゲが曲がってて写真うつり悪いから出ていくの止めとこ!」ってなるんじゃないか?
まあ、縁があれば、ってことで。
2時に到着。つまり2時に着くように事前に設定。
フロントのおにいさんは
「チェックインは通常3時なのですが…」と言いつつ、やや恩着せがましく鍵をくれた。
恩着せ、無視。
だってね~ ここは北海道だもん!
タクシーで9,000円かけて来たんだよ~
前回泊まった中村屋もそうだったが、かつての観光バスでドッといらっしゃる景気のいい時に、ドーンと部屋数多く作ってしまったホテルである。
あの宿は家族でお風呂や部屋を手直しして一生懸命であった。
が、お食事は取りとめなく品数がやたら多く、はっきり言えば、私は、飽きた。
同じ温泉郷の宿はおおむね同じ傾向にある。
つまり、ここに来る以前に私はおつまちゃんに言っておいたのだ。
「ここは、お風呂メインよ。お食事は食べられる物を食べて… だめだったら残す」
賑やかな電子音が、誰ひとりいないガランとした空間に響く。
時勢と反対の全然エコじゃないんだけど。
お部屋はかなり古びてはいるが、わりとゆったりしたスペースだった。
宿のHPの2面窓がある角部屋を想像していたのだが、1面だった。
しかしこのベッドのマットレスが、何と言いましょうかね…
全然マットレスとは思えないもので、横になっても、畳みたいにまったく沈まないの。
調べてみたんだけど、見た目はマットレスでした。不思議。
<風水>の枕で寝違えて首が「イタッ イタッ」のおつまちゃん、大丈夫でしょうか…
あとで無理やり設置したらしいバスルームとトイレ。トイレに換気扇がなく、便座に消臭機が付いております。
さーて、お昼代わりにパティスリー・ロクの、最後のケーキをいただきまーす! つつましく。
しかしね、こんなお昼、なんという 幸せ!
お風呂の前に、まだ明るいうちに散歩。
おお~~~ 湯元館の前の桜が満開でした。この木は桜だったんだ~
上を見上げて、しばしうっとり。
ソメイヨシノと違ってピンクが濃く、くもり空のもと、北の古木は威風堂々と、そして絢爛豪華であった。
あちこちの地面は一面に花びらで覆われている。
前回行った土産物兼、何でも屋さんのおじいさん、まだ元気かな~
おつまちゃんにそのおじいさんはね
「こんなところですけどね、春になって緑になってくると『ああ、こんないいところはないな』って思うんですよ」と言って、私を感動させたの、などと話しながら店に入った。
サッポロクラシックなどを買って店を出るとおつまが
「あの人、おじいさんじゃないですよぉ」
確かに! おじいさんじゃなかった。
おまけにかつて自分でも<おじさん>と表記していた。
時間と共にどんどん脚色してしまった! 汗汗~
ひっそりした温泉街のメインストリートは人通りもないが、そこからはずれると、動物の気配さえしない。
一回りして、さあ、暗くなる前に風呂よ~ 混浴露天よ~
おつまちゃんに「バスタオルか湯浴み着を持ってきてね」と言ったら
彼女は湯浴み着、楽天で探しまくったが見つけられず、
酸ケ湯でネット販売しているのに辿りつき1,000円・送料別、を即購入して持参。
私が川古温泉・浜屋で650円で買ったのとまったく同じものだった。
1,000円・送料別…
酸ケ湯の経営方針が透けて見えるお値段設定ね。
ホテルの表側、正面玄関からは想像できない、豊かな自然の中のお風呂。
階段を下りて行くと、川の音が聞こえる。
だれかが階段を降りてきたら、ちょっと注意すればいい。
新緑が美しい、あまり手を加えていない敷地内に、ほどよい大きさの露天である。
だれもいない。
うわっ! いいかんじ!
湯浴み着は必要ない雰囲気。しかし手に取れるところに置いておく。
誰も来る気配がなく、ちょっと熱めの、久しぶりの糠平のお湯を味わった。
これでもう少しぬるかったならば、1時間入っていられるのに… と、ちょっと残念だったが。
おつまちゃんは内湯で髪を洗うからと、先に上がっていった。
せせらぎの音も、緑のにおいも、やや熱めのお湯も、
とても気持ちよくて、満足したお風呂だった。
内湯は時間で入れ替わる。
高台から見降ろす位置にある露天。
日帰りの人が帰ってしまうと、宿泊客はだれも入ってこず、独り占め。
ガラス張りの内湯。
ガラスもお掃除されていて曇りなく、いい景色がダイレクトに見えて、好ましいお風呂です。
日帰りのための休憩所も整っている。
20分で100円のマッサージ機もあった。
あとで200円投資してやってみたけど、高いマッサージ師頼むより、これで十分!
さーてね、夕食です。
本日、広い食堂に6組の客です。
私が予約したのは<蟹と、ホタテ・牡蠣の網焼きと、すき焼き>というメニューです。
このほかには<三大蟹の盛り合わせ>みたいなメニュー(いや~ 我々これは絶対避けねば!)と、
なんだかどうってことないような和食膳(いや~ これもゴワゴワの天ぷらと鮮度の意悪い刺身とか出たらかなわん!)でした。
海鮮が食べられなくてもすき焼きでなんとか… という苦肉の選択。
これ、すき焼きのお肉です。この下にドリップがタプタプしていて、
野菜が赤くそまっております。
小さいタラバの足と小さい毛がに。
うーむ、鮮度悪いのでハサミを持つ手も情熱なく、そのうち面倒になってせせるのを中止する。
右の鯉のから揚げはまあまあ。しかしホタテと牡蠣は焼いているにおいで、私はもう駄目でした。
刺身もうううーん。
でもいいの。このほか、蕎麦が少しあったし、フキの煮物もあったし、
お肉も食べたから、おなかはいっぱいとなる。
スリッパをサンダルに履き替える下駄箱に、スリッパがなかったから、
露天にだれもいないってことで。
煌々と明かりをつけているので足元はよく見える。
できればもうちょっとほの暗くしてくれるとありがたいのだが、
それでもよく晴れた夜空には星が瞬いているのが見えた。
相変わらず誰も入ってこないありがたい混浴露天。
お湯の温度はやや下がって、時々星の光を眺めながら
川音に耳を澄ませながら、
ほてってきたら立ち上がってさまし、
冷えてきたらまた首まで浸かり…
そんなことを繰り返し、時間が流れていった。
いい風呂だった。
入れ替わったお風呂に。
綺麗にお掃除された脱衣所。
あ~ こっちの内湯は岩だらけ。
洗い場広々、シャワーも湯量がすごくある。
よく晴れて、外の木々の緑が爽やかに目に入ってくる。
露天のお湯もキラキラしていた。
昨日までの、静かに思索するような風呂の雰囲気は一変して、
楽しくて歌いだしそうなお湯の色。
ガラス窓に映る遠くの山々も、くっきりと顔を見せてくれた。
露天も行かなくちゃ~
あら! やっぱり誰もいなくてありがたい!けど、私たち以外のお客さんって、お風呂入っているんでしょうかね?
雪どけで水かさが増えているのだろう、透明な川の水面も日に照らされて輝いている。
抜けるような青空。
新緑の柔らかな黄緑色が目にとても心地よい。
湯気の向こう側に、生命がみなぎり新しい春を謳歌する植物の姿があった。
こんなふうに過ごせる時間を持てるということを、すべてのものに、すべてのことに、感謝した。
食堂に行ったらもう人気はなく、朝ご飯は私たちが最後だった。
私は牛乳1杯飲んだらおなかがふくれて、これだけでもういいかもね。牛乳おいしい。
なんやかや、いろいろあったような。
風呂とお湯はとってもいいのにね…
風呂だけでは客は来ないってことでしょね…
昨日と同じことやってて、ついにここまできちゃったんだから、
このままだとちょっと右肩上がりは難しいわね…
太陽にさんさんと照らされ温まった土、昨日までの雨で湿った畑から、モワモワと湯気が出ていた。
ああ…
朝起きて窓を開け、その日初めて目にするものがこんな風景だったら…
どんなにか素敵な1日の始まりだろう…
帯広・六花亭本店。 おねえさんが1階の石の床に、じょうろで水を撒いている。
「3時間以内にお召し上がりください」という制限付きのコルネ140円。
いつもあるわけではない。
かつ東京まで持って帰れない。
パイ生地よりも固めでサクリッと割れるような生地である。そのべたつかない生地のホーンの中に
カスタードと生クリームが半々くらいの、柔らかめのクリームが入っている。
生地の控えめな甘さ、流れる手前くらいのクリームの柔らかさ、印象深い優しい味わいのコルネ。
ソフトクリームのミニもいただいて、本日もおいしくってお安かった。
帯広駅前は、初夏の日差しだった。
タンポポの絨毯のような飛行場から、帰路に着く。
岩手沖から本州に入った。
三陸海岸…
<風光明媚>という日本語は、かつての三陸海岸のためにあるような言葉である。
自然でしか造り得ない複雑で美しい海岸線。
平地から突然急峻な緑の山になり、その背後に山々が連なる。
陸地のそばに様々な形の小島が点在する。
飛行機から見ると、海岸線にある直線の防波堤で囲まれた港に停泊するたくさんの船舶、
キラキラ光る波間に行きかう漁船や遊覧船、そして波間に漂うたくさんの小舟。
穏やかに豊穣な深い海の色。
かつては……
いま目の下にある風景は、台風の影響であろうか、
海岸線を洗う白波と、茶色くただれた大地が広がる。
1隻の船も見えない。
じっと目をこらして必死に探すと、ただ1隻、停泊している船が見えた。
ただ1隻……
このモノトーンの荒涼とした風景の上空を横切っていくことが
なんとも申し訳なく思われた。
今後も私の乗った飛行機は、この上空を通ることであろう。
そのときに、少しずつでも違う風景が見られますように。
どうぞそこに、新たな営みと希望が生まれていますように。
私は胸の内で祈った。
日本人全員の、今の願いだろう。
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