ねぶた温泉 海游 能登の庄




(2008年11月30日・12月1日 3人泊 @21,750円)


海游  能登の庄

秋の終わり、いや冬の始まり……

去年の奥能登への旅は、
そんな日の晴れた朝であった。
新宿駅は雲ひとつない青空が広がり、
これからの旅路を祝福してくれているようだった。


海游  能登の庄

たぶん私たち3人は心の中で

ゴウゴウと風の吹きすさぶ冬の荒れた日本海、
カモメが鳴いて波打ち際は波の花が漂い、
そして低く垂れこめた雲がどこまでも連なる。

ああ、しみじみと能登半島に来たのだ、
冬の日本海を見ているのだと思える、
そんな情景を想像していたはずである。


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東京の天気はどうでもいいからさっ!


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能登空港に着いたら、曇り空の下に小雪が舞うような…


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そんな風景に憧れて…

あら、曇ってる!
これはいいかも!


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能登空港からバスで向かった輪島の街は、
低く雲が垂れこめ
そして、寒かった。

その期待どおりの寒さが
胸にキュッとくるのであった。


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道路に貝殻が埋め込まれて、この街らしい風情になっている。

歩くと酒屋と酒蔵がやたら目につき
このへんから酒に目がない2人は楽しみが増したようで。




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宿のチェックインには早い時間だったので、
輪島・朝市通り近辺を散策。

もちろんカモメの鳴き声も聞こえる。


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老舗の蕎麦屋に入るも、
蕎麦とうどんの中間のような蕎麦が出てきて、

「ここは蕎麦はうまくないところなのね」
との結論を下す。


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そしてタクシーで宿に向かった。






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田舎の高級旅館、といった感じの宿であった。

どこかのんびりしていて、
つまり過剰に目から鼻に抜けないのがいいのかな。


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どーんと広い部屋に案内される。


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炬燵に入って海を眺める。

ひたすら眺める。

まちこは海を見て「もっと荒れろーー」と言う。

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海からの風が吹きすさぶ。暗い空、暗い海。そして人っ子一人通っていない窓の下の道。





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お湯はアルカリで、とてもツルツル感があった。

この展望風呂は宿泊客のみだが、
1階には日帰り客も入れる小さな露天付きの内湯があり、
そこはいつでもかなり賑わっていた。

地元ではなかなか評判がいいお湯のようである。


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展望風呂はいいんですけどね、目の前にダランとした電線が通っていて…
ま、旅館のせいではないんですけどね~ 市内から順次地下に通してるそうですが
「ここまで来るのはいつになるか…」とのことでした。

ちょっと残念。


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夕食には時間があったので、1人で宿の前のゆるい坂道を、海を眺めながら散歩。


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寒く、風が強く、こんな日はみんな家に閉じこもっているのだろう。
ジョギングスーツに身を包んだ男性が1人坂を駆け上っていく以外は、
本当に誰も歩いていないのだった。


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下をのぞくと、丸い石の連なる波打ち際には、泡だった波の花が白く山になっていた。
しばらく佇んで眺めてから、坂を下り始めると…

自転車に乗った少年が、下から上がってくるのが見えた。
おや?

なにか、一瞬こちらに頭を下げたように見えたので…
立ち止まって何となくその自転車のほうを見ていたら。


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少年はやがて坂を上って私とすれ違いざま、ぺこりと頭を下げ
「こんにちは~」

自転車で軽やかに坂の上に去っていく、その若い後ろ姿に
「こんにちは~」と返しながら、
この寒風のただなか、ほのぼのとした、他人の体温の温もりのようなものを感じた。



私が奥能登を思い出すときに、いまも真っ先に現れる情景である。


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夜、1階の風呂に行ってみた。
2階の展望風呂より小さい。

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付き当たりにある露天も庭の中の塀に囲まれた小さな露天だった。






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サービスのコーヒーをラウンジでいただく。

あら、晴れちゃった。

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お昼頃、部屋の窓から下を眺めていると、昨日は誰もいなかった通りに大勢の人が歩くようになり、
スカーフで頬かむりしたおばあちゃんがゆっくりと畑のほうから歩いてきて腰を伸ばしたり、
温かな日差しのもと、犬を連れて散歩する人がいたりと、のどかな風景が広がった。


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そのうちランドセルを背負った学校帰りの小学生が4人、立ち止まっているおばあちゃんの前を通り過ぎるときに、
みなおばあちゃんにお辞儀をする。
おばあちゃんが話しかけ、その周りを小学生が囲んでしばらく会話をしていた。

なにを話しているのか、想像できるような気がした。


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彼らはおばあちゃんに手を振りながら去って行き、そしてその後ろ姿を見つめているおばあちゃんがいた。

それは、まるで30年前の光景を見ているようであった。


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迫った山の端から急激に坂になり、断崖となり、それを降りると日本海の波が打ち寄せる狭い波打ち際。

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                        輪島朝市。市の時間だけ人も大勢歩く。

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「魔除けになるよ~ お正月のお飾りにもなるよ~ 買ってちょうだい」

朝市には手作りのトウガラシのお飾りを売っているおばさんたちが20~30人ほどいたような気がする。
同じトウガラシのお飾りでも、十人十色、個性がでるものだなあと感心した。

10年後の師走に私が朝市に行く機会があり、彼女がここで同じものを売っていたら、
私は間違いなく彼女の作ったものを選ぶことができると思う。

このトウガラシはいまも、私の部屋のドアに吊るしてある。

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ネットで調べていて、魅力的な名前の酒を見つけた。 <奥能登の白菊>  心惹かれる名前である。


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日本酒もワインも、ネーミングやラベルは造る人間の思いが込められていると思う。

「白菊」という酒はほかにもあり、そのために「奥能登の」と付けたのだろうが、
この名前に込める杜氏の思いが、私には伝わってきた。

小さな街なので、歩いてその酒蔵に。
白藤(はくとう)酒造。


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観光タクシーを頼んで、「間垣の里」方面に。

運転手さんにお願いして、
あまり観光ルートでないほうに行ってもらうことにしたのだ。


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車窓の外には、小さな湊の風景。
「ああ、今度はこういう海辺の安宿で、ご飯とお味噌汁で2~3泊するのもいいね」と言ったら

2人とも
「……」

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えーー!! なに黙っているんだよ~

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「間垣の里」

海のそばの小さな集落。高い篠竹で囲って、冬の吹きすさぶ風を防ぐ。
この囲いを集落で修理・補強しながら、いまに至るまで残っている。

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この小さな集落の人々が、肩を寄せ合って守ってきたもの。

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それはこの囲いだけではないはずだ。


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穏やかな日でも、ここには日本海の荒波が押し寄せていた。

岩に1本の棒が立っていて、タクシーの運転手さんに
「あの棒は何でしょう?」と聞くと
「あれは夏になると、子どもがあの棒につかまってあそこから海に飛び込むんだよ。そのための棒」

お父さんも、おじいちゃんも、そのまたおじいちゃんもあそこから日本海に飛び込んで遊んだのだろう。

ここには
「子どもが危険だから飛び込み禁止」とか
「棒を取り払って柵を設置」とか
「PTAの監視のもと」などという発想はないのだ。


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また1人で、穏やかな夕暮れの残光の中を散歩した。

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断崖に向かって、丹念に作られた小さな畑が段々にある。

転げ落ちそうな急なあぜ道を下っていくと、ここはネギ、あ、次はブロッコリー……
その下はきれいに耕されて何もない…

その下は半分枯れた白菜…


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そんなふうに崖の縁ギリギリまで、小さな畑は続いていくのだった。

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                 もう足元も定かでなくなってきたので、細い道を戻ると……

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その道は、長年踏みしめてきた人の足取りが、靴の裏から伝わってくる。

次の一歩はここ、その次はここ、その次はこっち、その先は石を避けてここ……

足裏からこの畑の持ち主の気配を感じる、奥能登の段々畑。

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2泊目は部屋食。  蟹三昧でした。いつくしんで造られた日本酒もうまくて2人はジャンジャン飲んでましたね。

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そりゃ、まずいわけありません。日本海の蟹。そして能登の酒。

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                     もちろん、蟹以外もいろいろ出ましたわよ~ん。
                              うまかったわ~。





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帰る日の朝は、よく晴れて風が強かった。


海も、空も、澄んでいた。
もうじき来る冬に備えて、小さな<奥能登の白菊>も、
秘めた決意を持つかのように、風に揺れながら気丈に耐えていた。

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                  実った赤いトウガラシが、残りの緑の中で鮮やかであった。

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奥能登…… 思い出すときに


断崖の上の風の音と

その風に揺れていた白菊の姿もまた、



私の心に蘇ってくる。








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